613 R3最終稿【久保田】
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106 も多い。しかし,この結果は下位層だけではなく,上位層まで含めた幅広い生徒が課題に応じた最適な学習方法をもつことができずに学習を進めている実態を表している。多くの生徒から定期テスト後に「もう少し,早くから勉強しておけば良かった」や家庭学習を行う際に「どのように勉強したら良いのかわからない」などといった声が繰り返し挙がることもうなずける。このような生徒は自分自身の学習の進み具合を客観的に把握することが難しく,学習を適切に進めるための方法をもっていないため,主体的に学習へ向かうことがやはり難しくなってしまう。 次に令和3年度全国学力・学習状況調査の報告書(質問紙調査)から,中学生の平日(月~金)1日当たりの学習時間と正答率とのクロス分析結果を確認した(4)。 この調査によると,平日に2時間以上勉強している生徒は全体の41.8%になる。平日に生徒が部活動を終えて帰宅した時刻から就寝するまでの時刻を考えれば,この41.8%の生徒たちの平日の学習時間をこれ以上増やすことは難しく,学校外でも学習することが習慣付いているといえるであろう。一方で,合わせて24.0%となる平日の学習時間が1時間未満の生徒たちは学習習慣が確立されているとは言い難い。 また,平日の授業時間以外の学習時間と正答率をクロス分析したところ,全ての生徒に当てはまるわけではないであろうが,やはり学習時間が短い生徒ほど正答率が低いという相関関係が見られる。 このような生徒は上述した学習上の悩みをもつ生徒と同様に,おそらく学習を適切に進めるための方法をもつことや自らの学習過程を客観的に捉えることができていないと考えられる。そのため,自身の学習に対して自信をもつことができず,不安感をもちながら学習を進めることになり,学習に消極的になってしまうのであろう。 これらの生徒の現状と課題から,生徒の家庭での学習習慣を確立し,主体的な学習を促していくためには,生徒が学習を自己調整していくことが必要だと考え,本研究は家庭学習の場面を想定して進めることとした。 第2節 学習の自己調整に必要な要素 先行研究で伊藤は,自己調整学習を「学習者が<動機づけ><学習方略><メタ認知>の3要素において自分自身の学習過程に能動的に関与していること」としている(5)。伊藤が述べているこの三つの要素を備えることで,生徒は高い意欲をもって学習に取り組むことができたり,学習方略を活用しながら学習を進めることができたりするのであろう。そして,学習過程全体を通してメタ認知を働かせることで,自身の学習のモニタリングを行い,問題があれば最適な学習方略を選択し,自己調整をしながら学習を進めることができると考えられる。 図1-1 令和3年度全国学力・学習状況調査の生徒質問紙 中学生の平日(月~金)1日当たりの学習時間と 正答率のクロス分析 中学校 情報教育 2

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