613 R3最終稿【久保田】
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生徒が進めている学習をモニタリングすることができるような運用の仕方も考えている。複数の指導者によるモニタリングが可能となれば,生徒はより専門性の高いアドバイスや即時効果のある学習方略を獲得することができる可能性がある。 一方で指導者にとっても生徒のSMSを確認する作業を分担することで,労力を減らすことができるであろう。そして,生徒が「自分にもできる」といった自己効力感を継続的にもつために,年に4,5回の定期テストだけではなく,日頃の提出物や単元テストなどを自己省察のスモールステップとして活用することも有効であろう。その際には,生徒の達成状況に合わせた指導者からの前向きな声かけが必要であり,それにより生徒は自分が進めてきた学習を価値付けすることができると考えられる。 自己調整の手段は人それぞれであるため,SMSの活用にはこだわらず,自己調整するために必要な情報や仕組み等を生徒に伝えた上で,生徒が選択することができるようにしたいと考えている。SMSのよさは客観的でわかりやすい学習状況の把握と,時間や場所を問わない生徒と指導者との間でのやり取りであるが,これらの利点も理解した上で,これまでどおりの紙など別の方法がやはり効率的で効果的だと判断した生徒はそれを活用できるように,幅のある指導を考えていく。肝心なのはSMSを活用することではなく,生徒が自らの学習過程を客観的に捉え,学習を改善するための振り返りを行いながら自ら学習方略を選択して,適切に学習を自己調整していくことである。そうすることで,生徒たちは徐々に指導者の手を離れ,自律した学習者として学習を進めることができるようになると考えられる。 (15) (14)再掲 本研究で行った実践の中には従来から行われてきた指導が多い。しかし,GIGA端末の普及と活用により,これまで以上に効率的かつ効果的に家庭学習指導を行うことが可能となった。今後もあらゆる場面において,GIGA端末を活用した指導が広がっていくことが考えられ,それを扱うための情報活用能力は更に必要となるであろう。 自己調整する力も同様である。生徒を取り巻く状況の変化,特に突然の休校や活動の自粛などといったコロナ禍による急速な変化によって,この自己調整する力の必要性は増している。本実践が社会の変化とそこから生まれる課題に対して柔軟に調整し,対処していくことができる生徒を育成する,その一助となれば幸いである。 最後に,本研究の趣旨を理解し,研究実践に取り組んでくださった,京都市立八条中学校と京都市立安祥寺中学校の校長先生をはじめ,両校の研究協力員の先生方,研究に携わっていただいた学年の先生方,そして,いつも笑顔で学習に取り組んでいる生徒たちに心から感謝の意を表したい。 おわりに 中学校 情報教育 23 127

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