613 R3最終稿【久保田】
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126 学習指導に活用することの有用性を私たち指導者が十分に認識できていないことである。 大人でも仕事の見通しをもったり,優先順位を付けたりするために,手帳に予定を書き込んだり,付箋に書き出したりすることで仕事の調整を行うことがある。人によっては何かにアウトプットするのではなく,全て自分の頭の中で予定を管理し,調整する人もいるであろう。意識的か無意識的か,自分が残してきた記録や第三者からの情報などをより効率よく仕事を行うための調整に活用している。しかし,生徒の学習の計画や行った学習の記録といった情報を生徒の学習改善とそのための指導に活用し切れていなかったように筆者は感じる。生徒が自己調整を行うためには,収集した学習情報の有用性についての認識を指導者自身が高めることと,その情報を活用した効果的な指導方法を更に研究していくことが必要であろう。 指導者側にもSMSを活用するメリットはある。SMSは電子データとして送受信でき,クラウド上で管理されているため,紙でやり取りをしていた時のような煩雑さや「提出した」「受け取っていない」といった行き違い,万が一の紛失のリスク等をなくすことができる。印刷の手間とコストを削減することもできるであろう。また,SMSには生徒がこれまで進めてきた学習の情報が蓄積されており,それがわかりやすく表示されている。年間を通して学習した記録を残すことができれば,懇談会時の資料としても活用できると考えられる。 また,第2章第2節(p.9)でも述べたが,学習方略の教示が不十分なまま生徒に家庭学習の指導を行っていることがある。方略を教示することもなく「家でもしっかり勉強してきなさい」とだけ生徒に指導することは学習という大海に舵もオールもなく生徒を送り出すようなものである。この点について,決して御座なりにしていたわけではないが,定期テストの直前や受験する学年になってからといったように,これまでは限られたタイミングでの指導しか行われていなかった可能性がある。本来であれば,指導者が学習方略を教示し,生徒がそれを獲得し実行するという過程は定期テストの前や受験する学年になってからでは遅い。小学生段階から日常的に行っておくべきことである。そして,学習方略の教示を生徒に行うためには,指導者が教示することができるだけの多様な学習方略をもつことが重要である。 以上に述べた指導観の変化がなければ,これまでどおりの指導が繰り返されるだけであり,自己調整することができる学習者へと生徒を育てていくことは難しいであろう。 (2)生徒の自己調整を支えていく 学習することに消極的な生徒が学習の自己調整を行うためには,学習の計画や行った学習の記録といった自身の学習情報が必要である。右の図4-4(n=151)は生徒に行ったアンケート結果である。今回の実践により,多くの生徒は学習の記録を残していくことの必要性を自覚しており,この点について生徒Gと生徒Hは以下の発言をしている。 生徒G:記録していなかったら,何で点数が低かった んだろうで終わってしまう。そこを見られる のが大きい。 生徒H:自分がやった内容とかも記録してあるから, こんな勉強方法をしていたから点数が上がった とか,この勉強方法は意味がなかったな というのがわかって,その次のテストや勉強に 生かせるから良いと思います。 しかし,その一方で日頃から学習情報を記録していくことが習慣となっていない現状も本実践から明らかとなっている。この点を改善し,生徒の学習の自己調整を支援していくために,来年度は学習の計画を立てることや学習した記録を残していくことの一層の価値付けを行い,生徒に対して継続的に発信していきたい。具体的にはSMSを活用した自己調整の成功例を交えて生徒に指導することやクラスメイトの活用例などを紹介することなどを予定している。さらに,担任だけではなく各教科の先生たちも,図4-4 学習の記録を残すことの重要性を認識して 中学校 情報教育 22 いる生徒の人数

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