(2) 研究協力員への聞き取りから 研究協力員にも今回の研究実践についての聞き取りを行った。聞き取りの結果,協力員Aからは以下の三つの点がプラスの変容として挙がってきた。 ・学習時間の増加 ・学習方略の増加 ・提出物が出るようになった 協力員Aは,これらの成果がみられた一番の理由として,生徒とSMSのやり取りをしたことを挙げていた。その内容を以下に示す。 生徒とやり取りを行うことで,生徒の学習の進め方を把握することができ,SMSを見て学習時間が普段よりも少なかったり,入力ができていなかったりすれば学習へのやる気が低下していると判断して指導することができたと思います。あと,教科書を読むやワークシートを見返すといった学習方法ばかり入力していれば限られた方略でしか学習ができていないと判断して,指導することができるというメリットがありました。それが学習時間や学習方略の増加につながったんじゃないかと感じています。 課題の提出率が上がった点については,SMSで提出日までの日数を確認しながら,(生徒が)見通しをもって学習をすることができるようになったからだと思いますね。 (筆者により抜粋,抜粋) また,協力員AはSMSを活用することができなかった生徒が一定数いたことについて,SMSへ入力することが面倒だというよりも,やはり日頃から計画を立てたり,学習したことを記録したりしていくことがそもそも習慣になっていない可能性を挙げていた。 続いて協力員Bから挙がってきた内容は主に以下の二つである。 ・デジタルのよさ ・生徒とSMSをやり取りすることの価値 協力員Bは実践期間中に毎日,生徒とSMSのやり取りを行い,生徒が学習のモチベーションを高めることができるように支援し続けていた。多忙な中,日常的にSMSを生徒とやり取りしていた協力員Bの発言を以下に示す。 これまでの紙だと無くしてしまっていたのが,デジタルだと無くさないので提出することが難しかった生徒も出せるようになったかなと。あと,学習の記録も残せるので,生徒が自分で学習を振り返ることができたのが大きかったと思いますね。それと,アナログだと計画表などを預かったら,その日のうちに返却してあげないと生徒が次の予定や学習した記録を書けないじゃないですか。でも,デジタルだと生徒から送られたSMSを僕たち(指導者)のタイミングでチェックして,アドバイスを添えて返信できるので,そこはデジタルのよさかなと。 紙でやってたときも(計画表を)提出させてチェックして,っていうやり取りをしていたので,デジタル(SSMS)になったからといって(チェックすることが)しんどくなることはなかったです。 生徒たちは僕が(SMSのやり取りの中で)声をかけたことを好意的に受け止めてくれていたんですけど,やっぱり「これだけ頑張ったね」とか「これだけ時間をかけてやったんだね」ということを教員側から声をかけてあげることで,生徒のモチベーションも上がっていくのかなと。大変ではあるんですけど,一週間に1回というふうにしてしまうと,なかなか習慣化しないと思いますね。 (筆者により抜粋,編集) GIGA端末を活用すれば,タイミングや場所に縛られることなく,生徒に学習のアドバイスをすることができる。生徒にとってみれば,自分が学習してきたことを先生に誉めてもらったり,認めてもらったりすることは嬉しいことであり,SMSのやり取りを行うことで,その機会がこれまで以上に増えたと考えられる。生徒の学習を継続してモニタリングすることができるという利点は,GIGA端末を活用したことがもたらした効果だといえるであろう。 第2節 生徒の更なる自己調整を促すために (1)指導者の指導観を変えていく 家庭に帰ると勉強しない,一人になると勉強ができないといった生徒は,現場に数多く存在している。今回の研究実践で,このような生徒たちの学習がいつまでも習慣化しない原因分析を行ったことで,これまでの家庭学習に対する指導観に疑問が生じてきた。例えば,学習の計画や学習した記録といった情報を中学校 情報教育 21 125
元のページ ../index.html#23