613 R3最終稿【久保田】
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生徒E:各教科の学習した時間がすぐにグラフ化されるので,国語と理科が勉強できていないな,と偏りとかがわかりバランスよく勉強することができるようになった。それまでは今日はこれやろうかな,と行き当たりばったりで勉強していた。 (筆者により編集) 生徒Dは,実践の中で行ったお勧めの学習方略を紹介し合う活動を通して,クラスメイトから新たな学習方略を獲得し,それを実行したことにより学習時間が増えたと話してくれた。SMSに学習時間を記録していくと,これまでの学習時間が教科別にグラフ化される。生徒Eにとっては,この機能が自らの学習を客観的に捉えるための支援となっていたことがわかる。また,この生徒はこれまでの無計画な学習の進め方から,SMS上の学習情報を分析して,学習時間のバランスを調整しながら学習を進めることができるようになっている。 以上から,学習方略を獲得したことで「この新しい方法を試してみよう」や,メタ認知を働かせたことで「不足している部分の学習を補おう」といった動機づけの高まりにつながり,それが結果的に生徒の学習時間の増加に結び付いたと考えられる。家庭での学習習慣を確立するには,学習の自己調整を行うための動機づけ,学習方略,メタ認知の三つの要素が必要であることが証明できたといえよう。 次に,GIGA端末を活用し,SMSを指導者とやり取りしたことの効果について,生徒への聞き取りとアンケート結果をまとめた図4-3(n=151 回答数=236 *複数回答可)とを合わせて以下に示す。 生徒D:SMSを提出すると,先生からのコメントが付いてくるので,もっとこうしたらいいとかアドバイスをすぐにもらえて,自分の学習の問題点がわかった。自分で立てた計画を先生からのアドバイスで修正することがあった。 生徒E:先生からのアドバイスだから説得力があった。 生徒F:学校でだけではなく,家でも先生からアドバイスをもらうことができた。 (筆者により抜粋,編集) 学習支援ソフトを活用してSMSのやり取りを行うことで,生徒たちは学習を進めながら指導者から様々なアドバイスを得ていた。図4-3からは,指導者からのアドバイスが学習を進めていく上での様々な助けとなっていたことがわかる。 生徒は,SMS上に記録してきた自らの学習情報の分析だけではなく,指導者からの視点をもとに多面的に学習の進め方の良し悪しを捉えることができていたと考えられる。このように,生徒がSMSや様々な情報を活用して学習を自己調整している様子から,情報活用能力が学習を自己調整することの基盤となっていることがうかがえる。 次に,実践による生徒の情報活用能力の変容について,生徒から聞き取った内容を以下に示す。 筆者:GIGA端末を操作するスキルは上がったと思いますか?実感とかはありますか? 生徒G:GIGA端末が関係しているかはわからないけど,いつも触れているからかタイピングが5分間で800文字の入力だったのが1000文字になりました。 筆者:学習支援ソフトのファイル共有機能や課題機能を使うことには慣れましたか? 生徒G,H:うんうん。 筆者:SMSに記録した学習時間や内容,方法といったいろいろな情報を整理することや分析することはできましたか? 生徒H:紙の時はテストが返却されたらすぐポイと捨てていたけど(笑),今はデータとして残せるから次にSMSに入力する時に前のやつを見て,「どこがあかんかったんかな」とか「時間が少なかったんかな」というのを強制的に見られるようになっているから,それで分析する力はちょっと付いたかなと思います。 (筆者により抜粋,編集) 123 図4-3 SMSを先生とやり取りしたことによる効果 中学校 情報教育 19 177

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