613 R3最終稿【久保田】
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<11月下旬> 定期テストが終了し答案が返却された後,生徒はSMSに各教科のテストの素点を評価の観点別に入力していった。今回は実践を始めた9月から11月下旬までの約2ヶ月間の取組の自己省察となり,前回のテスト結果からの推移を参考にした分析を行うことができた。 自己省察の段階では,生徒が学習目標を達成できたかを自己評価する必要がある。その際には,結果に対しての原因分析を行わなければならない。学習時間や内容,方略を調整してきたことと目標の達成とのつながりを意識した評価となるように留意した。もし,テストの点数が上がったのであれば,それは喜ばしいことであり,得られた喜び(成果を実感したこと)の原因分析を行うことが重要である。しかし,単なるテストの得点の増減やクラスメイトとの得点の比較となってしまっては,自身が調整しながら進めてきた学習の正しい評価にはつながらないであろう。 図3-11は生徒がGIGA端末の画面を二分割にしてSMSを確認しながら,自分が進めてきた学習の分析を行っている様子である。生徒の分析を観察していると,以前にも増して多様な視点をもった生徒がいることがわかった。例えば,以前は「社会の勉強時間が他の教科に比べて短かった」という学習時間に着目した分析が数多く見られた。しかし,今回は「論述問題の勉強をしたのが良かった」といった学習方略にも着目した分析や,「前回のテストの反省からテスト前に慌てることなく勉強ができた」といったこれまでの学習した記録や学習方略といった情報を活用して,学習の自己調整ができたことを分析している生徒もいた。GIGA端末を活用した文字入力等の基本的な操作スキルだけではなく,複数の情報から分析するといった問題解決・探究における情報活用能力も少しずつ向上している様子を見ることができた。 その他にも,「友だちから教えてもらった勉強方法を試してみたら,理科の点数が上がった」といった新たに獲得した学習方略を実行したことにより,学習の成果を実感できたことを分析した生徒もいた。このような生徒は学習に対する満足感を得たことで,動機づけを高めた状態で今後の学習に向かっていくことができるであろう。 一方で,学習の自己調整がうまくできずに「学習時間が少なかった」や「暗記ばかりではダメだった」といった,これまでどおりの反省を繰り返していた生徒も多数いた。このような生徒が学習の自己調整をうまく進めていくためには,やはり指導者による継続した支援のもとで,学習方略を獲得することやメタ認知を働かせる経験を積んでいくことが必要になるであろう。自己効力感が低下したままでは,学習することに消極的になってしまう。そのような生徒に対しての承認や賞賛といった指導者からの声かけは,なおさら重要な支援の一つとなるであろう。 生徒は自己省察の後,再び予見の段階へと進み,今後の学習の計画を練っていくことになるが,この予見の段階は以前と同質の予見の段階ではない。より高い動機づけと多様な学習方略,高次なメタ認知を備えた学習者へと成長しながら,学習を進めていくことができると考えている。 (14) 京都市教育委員会 「情報活用能力アドバイスシート」 2021.3 121 図3-11 画面を分けて,自分が記録してきた 中学校 情報教育 17 学習情報を活用した分析を行っている

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