613 R3最終稿【久保田】
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第3節 遂行コントロールの段階で この段階では,予見の段階で立てた計画をもとにして,学習を進めながら自身の学習のモニタリングを行い,問題があれば調整をしていくことになる。しかし,調整を行うための学習方略の獲得が現時点ではまだまだ不十分な生徒もいる。また,課題の提出や単元テスト,学校行事や部活動などの忙しい日々の中で,生徒が学習へのモチベーションを低下させてしまうことも考えられる。そのため,この遂行コントロールの段階では生徒が学習方略を獲得したり学習のモチベーションを維持したりするために,指導者が定期的に生徒の学習のモニタリングとアドバイスを行った。 <10月中旬から11月中旬> 指導者は学習支援ソフトの課題機能を用いて,SMSの提出を課題として生徒に割り当てる。生徒は指導者が割り当てた課題に従って,学習の計画や学習した記録を入力したSMSを提出する。そして,指導者は提出されたSMSをモニタリングし,生徒が進めている学習についてアドバイスを添えて返却する。その際には各教科の学習時間のバランスや学習している内容の偏り,学習方略の多様性などといった点に注目することとした。また,学習についてだけではなく,部活動や家庭での習い事などを応援することもあった。 この課題機能を使えば,他の生徒にSMSの内容を見られることなく,指導者は生徒に対して個別に指導することができる。実際に指導者が生徒へ送ったアドバイスが図3-8である。生徒Aに対しては,国語と数学の学習時間が他教科と比べて少ないことを指摘し,生徒に学習の計画と見通しの確認をアドバイスしている。生徒Bに対しては,予定どおりに学習が進んでいない原因をアドバイスし,改善するように指導している。生徒Cに対しては頑張っているバレーボールの練習と勉強の両立ができるように応援している。 SMSのやり取りを行うことで,生徒が学習方略を獲得することやメタ認知を働かせること,動機づけを高めることを一定程度,支援することができたと考えられる。また,近況報告などで生徒との関係性を育むこともでき,指導者と生徒との関係が良好になれば,指導者からのアドバイスを生徒が素直に受容することができ,より効果的な支援が可能になるであろう。 一方で,生徒が進めている学習の様子をモニタリングし続けることは指導者側にとっても非常に有用なことだと考えられる。これまで把握し続けることが難しかった生徒の家庭での学習の様子を可視化することができ,継続したモニタリングを行うことで,生徒の学習の進め方の変化を見取ることができれば,最適なタイミングで指導することが可能になる。 しかし,曜日を指定して週に一度は提出と返却のやり取りができることを理想としながらも,学校行事の関係や担任の先生方の日々の業務の忙しさ,日常的にGIGA端末の家庭への持ち帰りができないといった理由から運用については難しいところがあった。そのため,研究のポイントとなる実践であったが,日常的なやり取りを十分に行うことができなかったり,定期テスト2週間前のみのやり取りとなってしまったりしたケースもあった。 SMSを活用した日常的なやり取りは,生徒が学習方略を獲得することや学習のモチベーションを維持することを目的としたが,限られた期間でのSMSのやり取りだけでは,一度で生徒に伝えられるアドバ中学校 情報教育 15 119 生徒Aへのアドバイス 生徒Bへのアドバイス 生徒Cへのアドバイス 図3-8 教師からのアドバイス

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