613 R3最終稿【久保田】
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118 図3-7① 図2-5のシートを使って,これまで進めてきた 図3-7② 分析結果をもとに今後の学習計画を立てて 学習を分析している いる SMSへの入力を始めた当初は学習時間と学習内容のみを入力する生徒が多かったが,協力校の先生方には学習した方略もなるべく記録として残すように指導していただいた。なぜなら,学習を進めながら調整したり自己省察の段階で評価したりする際に,自分が選択してきた学習方略の適不適を分析する必要があるからである。学習方略についての分析がなければ,学習時間の長さや学習した内容だけでの原因分析となり,後で正確な自己省察を行うことが難しくなってしまう。 <9月中旬から10月上旬> この期間でどちらの学校でも定期テストが行われた。定期テストが学習のスタートやゴールになるわけではなく,テストのためだけに学習しているわけではない。しかし,実践を進める上で定期テストは生徒にとってわかりやすい区切りとなるだけでなく,「テストがあるから」といった外発的動機づけにもなる。わずかな期間ではあるが,生徒はこの定期テストに向けて学習してきた記録をSMSに残してきているので,自身の学習の記録と返却されたテスト結果を活用した分析を行い,今後の学習に向けたプランニングを行うこととした(図3-7)。今回は実践を始める前の架空のモデルで練習した時とは違い,実際の自分の学習情報を用いる。そのため,友だちと協力し合って行うのではなく,生徒個々で分析を行うこととした。 以下は生徒自身が進めてきた社会科の学習についての自己分析である。抜粋すると, 〇他の教科に比べて勉強時間は少なかったが,点数を取ることができた。 〇思考・判断・表現の点数が上がった。 〇記述問題の内容を考えたり,練習を行ったりした。 とある。この生徒は情報の関連付けを行うことにより,評価のどの観点で成果が出たのか,そして,成果が出たことと自分が行った学習方略とのつながりを理解することができていた。自分が選択し,実行した学習方略の有効性を認識することができたので,この方略を内面化することができたと思われる。 また,分析の後に行った学習の改善方法を考える活動では, 〇歴史のテスト対策の時に行っていた毎回の授業のノートまとめという方法を取り入れて勉強する。 と,他の学習方略を今後の学習で実行していくことを挙げていた。学習の成果を実感できたことで高い自己効力感をもつことができ,それが更なる学習方略の獲得と実行への動機づけにつながっていると考えられる。このような分析と学習方略の獲得を経て,生徒たちは次の学習に向けた計画を立て,遂行コントロールの段階へと移っていった。 中学校 情報教育 14

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