中学校 情報教育 13 117 図3-6 自分の学習方略をクラス全体に向けて 紹介し,共有している 次に生徒がいくつかの学習方略を獲得することができるように,分析結果をもとにどのように○○太郎くんの学習を改善すればよいのか,その方略をグループで話し合い,共有する活動を行った。活動の際には学習支援ソフトのファイル共有機能を用いて,自分の意見を付箋状のカードに入力し,動かしたり追加したりしながらグループで意見を構築した。 この活動では正直,学習方略をあまりもつことができていない生徒は「暗記ばかりしないほうがよい」とは言えるが,ではどんな方略で学習をすればよいかという,その具体的な対案を述べることができていないように感じた。一方,自分なりの学習の進め方を既にもっている生徒が,自分が実際に行っている学習方略を,学習を改善するための方略として発言している場面が多かった。グループで話し合った内容は学習支援ソフトを利用して発表することで,クラス全体でも共有した(図3-6)。また,共有フォルダに保存することで,生徒はいつでも今回の活動で話し合った学習方略を取り出し,閲覧することができるのである。 以上の分析の練習や改善のための学習方略を考える活動は,GIGA端末の情報の蓄積や共有といった機能を利用したものである。蓄積した様々な学習情報を比較したり関連付けたりすることで,生徒はメタ認知を働かせ自身の学習状況を客観的に捉えることができるであろう。そして,他者と学習方略を共有することで,自分が知らなかった新たな学習方略を獲得することができると考えられる。以下は生徒が発表した改善のための学習方略の抜粋である。 〇暗記ばかりではなく,用語の意味までノートに書いて勉強すればよい。(認知的方略) 〇自分のレベルに合った目標をつくるところから始めたほうがよい。(メタ認知的方略) 〇自分で問題をつくったり,友だちに説明したりしてみる。(認知的方略) 〇やる気がなくなったらダラダラするんじゃなくて,休んでメリハリをつける。(自己動機づけ方略) 限られた学習方略しかもつことができていなかった生徒にとって,クラスメイトの学習方略を知ることは今後の学習を進めていく上で有用な情報となったであろう。また,既にいくつかの学習方略をもっている生徒にとっても刺激になったと考えられ,新しい学習方略の獲得が「自分も試してみたい」という方略を実行する動機づけとなることが期待できる。以上の指導や活動を事前に行ったことで,自己調整学習のサイクルを回していく準備が整った。次はいよいよ生徒が自分自身の学習を自己調整していくことになる。 第2節 予見の段階で <夏休み明けから9月上旬> SMSを活用して,生徒が学習の計画を立てたり学習した記録を残したりしていく活動を行った。入力に関しては,生徒に習慣化させる目的があったため,例えば金曜日に次の1週間分の計画を立てて,翌週から実際に勉強した記録を入力していく。そして,再び金曜日に次の1週間分の計画を立てるといったように曜日を指定したサイクルで実践を行うことを基本とした。しかし,実際は各クラスで生徒の状況等も違うので担任の先生たちが運用しやすいようにアレンジしてもらった。 また,SMSの提出については,学習支援ソフトの課題機能を活用した。提出のタイミングに関しては,毎週特定の曜日を定めて生徒に提出するように指示する指導者(担任)もいれば,学校行事や生徒の生活の様子などを見て,特に曜日を固定することなく,指導者の指示で生徒が提出するという方法を取る指導者もいた。提出する割り当てもクラスの生徒が一斉に同じ日に提出する形を取る場合もあれば,月曜日は1班,火曜日は2班といったように曜日ごとに班を指定して提出させたり,個別で提出させたりする場合もあった。
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