116 ⑦学習情報を分析する練習と改善するための学習方略を考察する 実践が始まると生徒はSMSに1週間分程度の学習計画を入力し,その後,実際に行った学習の時間や内容,方略などを記録として残していく。つまり,自分が計画した学習を進めながら,自身でモニタリングし,学習方略を選択することで学習をコントロールしていくことになる。しかし,実践前の時点では,多くの生徒が学習をモニタリングする方略(メタ認知的方略)やコントロールするための方略(認知的方略や自己動機づけ方略)をもつことができていないと考えられた。本研究では,GIGA端末を活用し他者と学習方略を共有することで,学習を進めながら方略を獲得することができるような仕組みも想定してはいるが,実践前にもある程度の学習方略を獲得しておく必要があると考えた。そこで,架空のモデルを用いた学習情報を分析する練習とよりよい学習方略を考察する活動を行うこととした。 図3-4はSMSに入力した架空のモデル〇〇太郎くんのテスト2週間前からの学習記録(筆者が作成)の一部である。生徒には学習支援ソフトを利用して配信し,まずは個々に〇〇太郎くんの学習の進め方の良し悪しを分析してみることにした。予期していたとおり,生徒は膨大な学習情報のどれに注目すればよいのかわからない様子であったため,分析する視点を明示した図2-5(p.8)のシートを配信した。生徒は分析の視点や方法を獲得したことで,活発に分析を進めることができるようになった。やはり,そもそもの方略の獲得がなければ効率的かつ効果的な活動はできない。一人で分析を続ける生徒や友だちと協働する生徒,指導者に質問する生徒など,生徒たちは自分に合ったスタイルで分析を進めていた(図3-5)。以下は生徒が分析した結果を抜粋したものである。 〇社会科に勉強時間をかなりかけているけど,テストの結果はそんなに良くない。 ←学習にかけた時間を他教科と比較した上で,テストの点数と関連付けた分析を行うことができている。その後,生徒は「勉強の仕方が悪いんじゃないかな」と○○太郎くんが行った学習方略が不適切だった可能性についての発言をしていた。 〇社会科の勉強の仕方が暗記ばかりになっている。 ←社会科と他教科との学習方略の違いに着目した分析を行っている。 〇テストの十日ぐらい前はあまり勉強していなかったのに,テストの直前になってから急に勉強時間が増えている。直前に詰め込み過ぎ。 ←テストに向けた学習計画全体のバランスに注目している。 生徒は,○○太郎くんが社会科の勉強に時間をかけていることに気付き,さらにその学習方略が語句の暗記に偏っていることを見抜いていた。一方で,英語科にはあまり時間をかけていないのにテストの点数が良いことに気付いた生徒もおり,単語の暗記ばかりではなく,長文読解なども行っている学習方略のバランスのよさを指摘していた。このように生徒は学習時間だけではなく,学習方略やテストの点数など,計画表に記録された様々な情報をもとにした分析を行うことができていた。その後,学習支援ソフトを利用して,〇〇太郎くんが進めた学習の分析結果を全体で共有する活動を行った。 図3-4 架空のモデル○○太郎くんの学習計画と学習した記録の一部 図3-5 個人でもしくはクラスメイトと分析を 中学校 情報教育 12 行っている
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