114 図3-1 情報活用能力アドバイスシート(京都市教育委員会) 問題解決・探究における情報活用 整理・分析 例えば,自主学習でいつも社会科の重要語句をノートに繰り返し書いて,提出し続ける生徒がいたとする。この学習方略は学習内容を覚えるためには有効だが,学習内容の意味理解を記述式で問うような問題が出題された場合,この生徒は答えることができるだろうか。指導者は生徒に対して,繰り返し暗唱したり書いたりすることとは違う学習方略を指導する必要があるのではないだろうか。それは,生徒がより主体的に学習に向かうための動機づけの方略や,生徒がメタ認知を働かせるための方略を獲得するための指導についても同様である。生徒は学習を改善するための新たな学習方略を十分に備えることができず,限られた方略を用いた自己調整しか行うことができなかった可能性が指摘できる。 本研究では,SMSに学習記録を残していき,学習支援ソフトのファイル共有機能・課題機能を活用した指導者とのやり取りやモニタリング,授業等での学習方略の共有を行うことで,生徒自身が日々の学習を進めながら日常的に学習を自己調整していくことができるような仕組みをつくっている。そして,その仕組みの要となるのがGIGA端末の活用であり,日常的に情報活用能力を習得し,発揮できる場面の創出もねらいとしている。また,学習方略を獲得することやメタ認知を働かせること,それにより動機づけを高めることが,GIGA端末の活用によってこれまで以上に日常的な学習の中で行われるようになり,自己調整する力がより効率的かつ効果的に育成できると考えている。 (13) 2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会 『2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会 最終まとめ』 2016.7 p.13 本研究における実践は京都市立中学校の2校で実施し,どちらの学校においても学年全体(中学2年生)で進めることとなった。 実践を進めていくための基盤となる資質・能力が情報活用能力になるが,両校とも教科の授業等で日常的にGIGA端末を活用していたことから,生徒は文字の入力といった基本的な操作スキルは身に付けており,学習支援ソフトの扱いにも慣れていた。 図3-1(14)は京都市教育委員会が作成した情報活用能力アドバイスシートに示されている問題解決・探究における情報活用の中の情報を整理・分析する能力である。小学校高学年段階で情報を表やグラフに整理して複数の観点から分析し,傾向と変化を捉えるとしているが,全ての生徒がこの能力を身に付け,ステップⅣまで到達できているとはいえないであろう。そのため,本研究ではステップⅢにあたる情報の活用経験を積むことを目的とし,ステップⅣへとステップアップすることを目指していく。 多面的にみる,抽象化する,構造化する等の目的に応じて考えるための技法を選択し,表やグラフに整理して複数の観点から情報の傾向と変化を捉える。第1節 実践を始める前に 実践を始めるにあたって,次ページの①から⑦までの指導や活動を7月から9月にかけて行った。本節ではこの中から,動機づけとして行った①の指導と学習方略を獲得するために行った⑦の活動について記述する。 中学校 情報教育 10 第3章 実践の具体 (筆者により編集) 小学校高学年(ステップⅢ)中学校(ステップⅣ)目的や状況に応じて統計的に整理したり,考えるための技法を組み合わせたりして,傾向と変化を捉える。
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