613 R3最終稿【久保田】
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ていた。しかし,もっている学習方略が限定的であり,自身の学習状況を捉えるためのメタ認知を働かせることが十分にできていなかった。そのため,成果が実感できるところまで学習を適切に進めることができず,やる気を高いレベルへ引き上げることができない状態が繰り返されたと考えられる。 本研究では,学習の成果を実感させることが生徒の動機づけをより自律性の高い内発的な動機づけへと移行させていくための最も有効な方策だと考えている。しかし,生徒が学習の成果を実感するためには多様な学習方略をもつことと,メタ認知を働かせながら学習を適切に進めることが必要である。そのため最初は報酬や義務感といった外発的な動機づけをきっかけとして,まずは学習を進めていく。そして,その過程でGIGA端末を用いてクラスメイトや指導者と学習方略を共有したり,メタ認知を働かせるための客観的な学習情報を活用したりしながら生徒が学習の成果を実感できるように指導していく。これにより,やがて自律性の高い内発的動機づけへとつなげていくことができると考えている。 また,生徒が学習の成果を実感するまで粘り強く学習に取り組み続けるためには,やはり指導者からの支援が必要である。この点についても,GIGA端末の活用が有効である。GIGA端末を活用して,他者と共有するのは学習方略を獲得するためだけではない。他者とつながることで前向きな声掛けを得ることができたり,ファイル共有機能を利用することで指導者から適切なアドバイスを受けたりすることができる。指導者が生徒の学習をモニタリングし続け,生徒が学習の成果を実感することができるように寄り添いながら支援することで,動機づけを高めることへとつなげていきたい。 第2節 日常的に家庭学習を自己調整して 学習の自己調整は定期テスト1週間前の部活動が休止になる時や,計画表やテスト範囲表が配られた時から行うものではない。確かに定期テストに向けては入念に準備をして取り組むべきであり,学習に取り組むための動機づけとなるが,定期テストが学習のスタートやゴールになるわけではない。学習の自己調整は定期テストの前後に関わらず,日々の学習過程の中で継続して行われていくべきものである。 しかし,これまで生徒は,定期テスト前に計画表が配られてから学習の計画を立てたり,テスト後に反省プリントが配られてから振り返りを行ったりと,日常的に学習を自己調整できていたとは言い難い。このように生徒が期間限定的に学習を自己調整しているのは,筆者を含めた指導者側の指導の在り方にも原因があると考えられる。例えば,テストの2週間前や1週間前にテスト計画表を配付することが,「勉強はこの計画表が配られてからでいい」と生徒に錯覚させていることはないであろうか。「勉強は日頃からの積み重ねが大事」だと指導しながら,日常的に目標の達成に向けて計画を立てたり,生徒の毎日の学習の積み重ねを記録したりするような指導を行ってきたであろうか。指導者は特に意識することもなく,定期テストの前後といった限られたタイミングでの学習の調整しか生徒に指導してこなかった可能性がある。 この点について,日々の学習の計画や記録を日記や手帳に書き留めていく取組がある。この取組は中長期的な目標を設定し,日常的にその達成に向けた計画を立てることで,生徒は見通しをもって学習を進めることができる。しかし,計画や学習方略を変更する必要が出た際に,手帳に記録した情報を学習の自己調整に活用する方法やその情報を使った指導方法までが確立され,実践できているケースは少ないと考えられる。 そして,最も大きな問題と考えているのが,指導者が学習方略(認知的方略,自己動機づけ方略,メタ認知的方略)を生徒に十分に指導することができていなかった可能性があることである。頑張ろうと思っていても,どのように勉強をすればよいのかわからない生徒は,効率的にも効果的にも学習を進めることが難しい。学習を進める際の生徒への学習方略の教示が,十分にできていなかったと筆者は考えている。 113 図2-6 これまでの学習を自己調整するタイミング 中学校 情報教育 9

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