公助 共助 図2-2 明示された視点に基づいて分類する 図2-3 比べて共通性を見いだす 関東地方の主要産業は,どんな産業だと思いますか? 図2-4 未知の事象について予想する 分類するという思考は情報活用能力の一つとしても位置付けられている。文部科学省「21世紀を生き抜く児童生徒の情報活用能力育成のために」(8)では,情報の適切な分類として,情報を整理した視点そのものを児童生徒が考えるようにすることを求めている。これは活動例❷のパターンといえる。 しかし図2-2のように,視点そのものを習得することが必要であったり,視点を明示した方が単元や授業のねらいに効果的に迫ったりできる場合もある。状況に応じて➊と❷のパターンを使い分ける。 ②異なる事象を比べて共通性を見いだす 細谷は著書「具体と抽象」(9)の中で,複数の 事象の間に法則を見つけるパターン認識を抽象 化と位置付け,身の回りのものにパターンを見 つけ,それに名前を付け,法則化して複数場面 に活用する有用性を述べている。 異なる情報を比べて共通性を見いだすという 活動によって,事象を捉える際に有効な視点の 習得につなげることは,細谷のいう具体を抽象 化することと似ている。図2-3を例に説明する。 暑い地域の暮らしの学習では,伝統的な住居 には高床が多く,それは風通しを良くすることで高温多雨による湿度や浸水被害などから守る工夫であることを学ぶ。また,別の寒い地域の暮らしの学習でも同様に,高床の家屋があることを知り,それは温かい住居内の熱が永久凍土に伝わることで,住居が傾くことを防ぐ工夫であることを学ぶ。暑い地域でも寒い地域でも高床の住居が見られるものの,その理由は異なるということである。それぞれの地域の具体的な事実を比べることによって,抽象度の高い「どちらの地域の住居にも気候が関係している」という共通性が見いだされる。どちらの地域の住居にも気候が関係しているという共通性は,他地域のくらしを学習するなどの際に「気候に着目すると理由が考えられるかもしれないぞ」というように,未知の事象を読み解く際にも有効な視点として生きて働かせることができる。 ③未知の事象について予想する 予想するという活動は,単元や授業の冒頭などによく設定される。その目的の多くは,次に出会う事実と予想とのズレを問いの設定につなげたり,調べる・検証するための指針や動機付けにしたりすることである。 そうした目的に加え,本研究では別の目的意識ももって予想するという活動を設定する。その目的は,他の活動同様,視点の表出を促すことにある。 未知のことを予想する際,その予想を形成する過程では何らかの視点が内包される場合が多い。図2-4に示す昨年の実践を例に説明する。未習単元である関東地方の主要産業について予想した中学校2年生の記述である。この生徒は,農業と結論付けた理由について二つの予想を立てている。一つ目の予想は気候を視点として,二つ目の予想は人口や距離を視点として考えを形成していることがうかがえる。 小・中学校 教科指導(社会科) 7 災害に強い日本をめざして ~みんなの考え~ 暑い地域と寒い地域の住居にはどのような共通点がある? 意外と 農業 1:太平洋側で降水量が多そうだから 2:首都 東京に向けた近郊農業が盛んそうだから しかし人口が都市に集まりすぎるため,農家が少なそう だと思う。 被害を少なくする ための政策を国や 市に求めていけば 赤道付近の太平洋上の島々では,高温多雨による湿気を防ぐために高床にしている伝統家屋が見られる 自分で判断して行動できる力もいるのでは… 近所の人で助け合える 関係やルールを作って くのはどうかな 気候は住居の形状に影響を与える場合がある 自助 高緯度付近では家内の熱が永久凍土を溶かして住居が傾くことを防ぐために高床になっている住居が見られる 41
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