610 R3最終稿【藤本】
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第1節 手立ての方向性 焦点化する資質・能力と同様に,多面的・多角的に事象を捉える力を育む手立てについても,小中で研究推進することを踏まえたものにする必要がある。小中の指導者並びに児童生徒にとって難解なものでなく,できるだけ社会科のみならず他教科でも転用可能な教科横断性のあるアプローチを検討する。 社会科の単元全体の指導計画の中に,「多面的・多角的」(小学校では多角的)という言葉が使われていないものを探す方が難しい。観点ごとの目標や評価規準にはその言葉がよく用いられる。それほど多面的・多角的に事象を捉える力を育む実践はこれまでにも日常的に行われてきている。 ① ② 第2章 資質・能力を育む手立て (1)京都市教育委員会・京都市総合教育センター『令和2年度研究紀要』2021.3 (2)文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 社会編』2017.7 p148,149 (3)前掲(2) p22 (4)文部科学省『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 社会編』2017.7 p26 (5)文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)』2017.3 p76,82,88,106,107,165 (6)文部科学省『中学校学習指導要領(平成29年告示)』2017.3 p65,154 (7)文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 総合的な学習の時間編』2017.7 p83 表2-1 本市が蓄積している指導案からうかがえる多面的・多角的に事象を捉えることへのアプローチ これらの記述から「多面的・多角的に事象を捉える力」は小中を通して培うべき,そして各教科を横断して培うべき資質・能力であるといえる。 では,そうした力を育むために各指導者は,何をもって多面的・多角的に考察したこととしているのだろうか。本市教育センターに蓄積されている社会科指導案(平成30年~令和2年)の中から,「本時の授業」において多面的・多角的に考察することを主たるねらいにしたものを抽出した。それらをもとに,多面的・多角的に事象を捉える力を培う手立ての分類を試みたものが表2-1である。 複数の資料をもとに考えを形成する(指導者によって想定された一定の答えである場合も含む)ことによって多面的・多角的に事象を捉えることとする実践 多様な解が想定される問いに対して,自分の考えを形成することによって多面的・多角的に事象を捉えることとする実践 複数の「資料によるアプローチ」(表中①)と複数の解が想定される「問いによるアプローチ」(表中②)に大分した。①のみのアプローチによる実践も確認できたが,多くは①と②を組み合わせて多面的・多角的に事象を捉えることを担保しようとする実践であった。確かにどれも児童生徒に多面的・多角的に考えることを促そうとする指導者の意図が感じられる。実際の授業でも,概ねその意図どおり,多面的・多角的に事象を捉えている児童生徒の姿や記述から,指導者は手応えを実感できたのではないだろうか。 ただ指導者がそうした手応えを仮に実感していたとしても,同じように児童生徒も多面的・多角的に小・中学校 教科指導(社会科) 5 資料B 多様な解が想定される問い 自分の考え 資料A 考えor答え 他者の考え 39 資料C 他者の考え

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