610 R3最終稿【藤本】
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38 表1-2 多面的・多角的に関わる学習指導要領解説上の表記 「多角的に考える」とは,児童が複数の立場や意見を踏まえて考えることを指している。 ■小学校4・5年生の算数の目標(2)p76,82 「解決の過程や結果を多面的に捉え考察したりす る力などを養う」 ■小学校4~6年生の算数の目標(3)P76,82,88 「多面的に捉え検討してよりよいものを求めて粘 り強く考える態度」 ■小学校6年生の理科の内容A及びB p106,107 「~を多面的に調べることを通して次の事項を身に付けるよう…」 ■小学校特別の教科道徳の目標 p165 「物事を多面的・多角的に考え,自己の生き方についての考えを深める学習を通して,道徳的な判断力…」 ※表中のpは小学校学習指導要領,中学校学習指導要領のページ。下線は筆者。 ※中学校学習指導要領解説 総合的な学習の時間編にも同じ記載がある。 小学校学習指導要領解説の社会編p22 しかし,それぞれの言葉にはこうした意味の違いはあるものの,「これは多面的だ」「いや多角的だ」というように,その違いを明確な意図をもって指導されているかといえば,筆者の経験上,考えにくい。仮に明確な意図をもって指導されていたとしても,生徒らが多面的と多角的を使い分けて思考することが求められる場面も想定しにくい。 また,表1-2の説明だけを切り取って見ると,小学校では「多角的」まで,中学校ではその「多角的」に加えて「多面的」も,というように,系統的に指導することが求められているようにも読める。例えば小学校6年生では,代表的な建造物や絵画に着目して室町文化が生まれた頃の様子について学習する。これは,室町文化が生まれた頃の様子について,文物という側面からを捉えるという意味では,多面的に事象を捉えることに通じるものともいえないだろうか。 よって小中で進める本研究では,「多面的」と「多角的」を明確にすみ分けることはせず,これらを一体的に捉える中で,大きく「いろいろな視点から事象を捉えること」として実践を重ねる。 最後に,焦点化する資質・能力について教科横断性という観点からも触れておきたい。焦点化する資質・能力が教科固有性の強いものになると小中で研究を進める妨げになる場合も考えられるためである。表1-3は,社会科以外の学習指導要領を見渡して整理したものである。社会科のみならず複数の教科で,本研究で焦点化する資質・能力に関わる記述が確認できる(5)(6)。 表1-3 焦点化する資質・能力に関わる学習指導要領の記述(社会科をのぞく) 教科等 算数 数学 理科 道徳 なお,教科等を横断する総合的な学習の時間の小学校学習指導要領の解説には次の記載(7)がある。 「物事を比較したり分類したりすることや,物事を多面的に捉えたり多角的に考えたりすることは,様々な形で各 教科等で育成することを目指す資質・能力やそのための学習の過程に含まれている。(中略)こうした過程において は,(中略)それぞれの教科等に特有の見方・考え方も関わっているが,対象を何らかの性質に基づいて分類し,気 付きを得たり理解を深めたりするという思考が行われていることについては共通している。(中略)この共通性に児 童が気付き,対象や活動の違いを超えて,視点の移動という「考えるための技法」を身に付け,その有効性を感得 し,様々な課題解決において適切かつ効果的に活用できるようになることが望まれる。 小学校 小・中学校 教科指導(社会科) 4 「多面的・多角的に考察」するとは,学習対象としている社会的事象自体が様々な側面をもつ「多面性」と,社会的事象を様々な角度から捉える「多角性」とを踏まえて考察することを意味している。 ■中学校1年生数学の目標(3)p65 「問題解決の過程を振り返って検討しようとする態度,多面的に捉え考えようとする態度を養う」 表記なし ■中学校特別の教科道徳の目標 p154 「物事を広い視野から多面的・多角的に考え,人間としての生き方についての考えを深める学習を通して,道徳的な判断力…」 中学校学習指導要領解説の社会編p26 中学校

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