図4-3中学校の指導者が小学校の 授業で児童に問いかける べた。その一つの答えが実践を通して確認できた。ただ中学3年生といっても個人差はあるので,その示し方については検討する必要がある。現在,児童生徒たちは図2-6(p.9)のように,関連性のある見えるーペが一覧にまとられたものの中から必要に応じて学習の中で使用している。実践後の振り返りアンケートで,ある生徒が「虫メガネ,一覧じゃなくてファイルごとに分類したらいいのではないか」というアイデアをくれた。児童生徒らが個々に分類し,自分の考え方で「お道具箱」に名前を付けて整理するのも一案かもしれない。 (2)小中連携の在り方について 図4-3は小学6年生のある授業の冒頭の様子である。テレビに映っているのは中学校の指導者である。児童たちは前時に,参勤交代が当時の武士たちにとって経済的にも精神的にも厳しい政策であったことを学習していた。その前時を受け,中学校の指導者が「参勤交代って本当に厳しい政策だけだったのかな。視点を変えてみると,そんな政策だけではない気もするんだけどなぁ」とつぶやき,前時の学びを問い直す問題提起をした。 たったこれだけのことではあるがメリットもある。多くの児童にとって は数か月後に通うことになる中学校の指導者からの問いかけである。本時 の学習への動機付けとなる効果が感じられた。また中学校の指導者にとっては,小学校の社会科がどのような内容を扱い,どのように行われているかについて知り,授業改善のヒントを得る機会になる。 他にも実際に行われている授業を異なる場所から参観しながら,研究の手立てを確認したり指導観について話し合ったりもした。学習支援ソフトのWEB会議機能を用いれば,施設を隔てた環境下にある学校同士でも,少しの空き時間でこうした日常的な小中連携も可能である。 このように小中連携の在り方として新たな可能性を感じることもあった一方で,「協働」していこうとする意識が強いことで,かえってうまくいかなかったケースもあった。 本研究は,焦点化する資質・能力とその手立てについて共有して実践を進めた。小中間で目的と指導観を共有して実践を重ねたのである。実践の具体についてはそれぞれの指導者に委ねることを基本とした。しかし授業によっては扱う資料や問いの吟味,授業展開など細部にわたって,筆者が積極的に意見することもあった。そうした場合ほど「おそらく児童はここでこういう反応を示すだろうから…」という筆者の想定どおりにならないことがあった。特に小学校の実践においてである。 筆者は中学校籍である。児童と生徒の学習実態は異なる。学習実態を小中が互いに把握しておくことは,連携して授業改善を進めていく上で非常に大切である。しかし,その違いの程度を的確に捉えることが想像以上に難しかった。 次節では,実験的に行った小中の実践をもとに,児童と生徒の学習実態の違いに触れながら,今後の研究の指針について述べておきたい。 第3節 今後の展望 B小学校5年生の単元「情報産業とわたしたちのくらし」の7時間目には,同じ事実を扱う記事にも関わらず,情報の受け手の印象が大きく変化しやすい二つの記事を比べる学習活動に取り組んだ。2枚の新聞記事を比較することで,情報がもつ影響力や情報の受け手に求められることについて,情報の受け手の立場から考えることがねらいであった。 2枚の新聞記事は同じ事実を扱っている。しかし記事中に掲載されている写真やグラフの示し方,使われている表現,文章構成等が異なることで,読み手の印象が変化しやすいように編集されている。その際に扱った新聞記事が,次ページの図4-4の児童が手にしている資料である。 これは図3-4(p.12)に掲載されているA中学校3年生が扱った資料と同じものである。 第3章第1節(3)で紹介した中学校の実践(単元「民主政治と政治参加」)は,公正な民主政治の 実現に向けては,世論をつくる自分たちが,情報を多面的・多角的に捉える力をもつ必要があると気付 小・中学校 教科指導(社会科) 21 55
元のページ ../index.html#23