第1節 児童生徒の側面から (1) 付いてきたと感じる力 表4-1は「社会科の学習で付い てきたと感じる力」について尋ね たアンケート結果を校種別に実践前後で比べたものである。 第4章 研究の成果と課題 表4-1 実践前後のアンケート比較① 50 最も付いてきたと実感する力に「いろいろな視点から考える力」を選ぶ割合が小中ともに実践前より高まっている。これは,児童生徒に付けようとする力と児童生徒らの実感が一致していることを示すものである。 昨年に引き続き研究を進めてきた中学校では,実践前から「いろいろな視点から考える力」の割合は決して低くなかった。その割合は2年の実践を経て,更に上昇している。あくまで児童生徒による実感なので,実際の力の高まりについて明言することはできない。しかしこれらの結果から,多面的・多角的に事象を捉える力を小学校と中学校で育む手立ての有効性は感じられるのではないだろうか。 では児童生徒たちの中に,学習していることは将来にわたって役に立つという意識は醸成されたのであろうか。第1章第1節(2)では1年次の実践後アンケートの結果をもとに「多面的・多角的に事象を捉える力」は大人に比べて生活経験の少ない生徒であっても,実生活に役立てられそうなものとしてイメージしやすい可能性があることを述べた。仮にそうならば,表4-1の結果が得られた今回も,学んでいることは将来にわたって役に立つと認識する児童生徒の割合は増えるはずである。続いてその詳細について,校種別に記す。 (2)将来にわたって役立つという実感 中学校 図4-1は,「社会科で学習していることは将来にわたって役に立ちますか」という質問に対する中学3年生の回答を実践前後で比較したものである。 肯定的に回答する割合(とてもそう思う+そう思う=98.6%)に前後の変化はないものの,「とてもそう思う」と回答する 割合が上昇(28.2→40.3)している。 この変化は,実践前に「そう思う」と回答していた生徒のうちの9名が,実践後に「とてもそう思う」へと変わったことによるものである。このうち8名の生徒が,実践後のアンケートにおいて,付いてきたと感じる力に「いろいろな視点から考える力」を選択していた。中学生にとって「多面的・多角的に事象を捉える力」は,将来にわたって役立つという実感に結び付きやすいことを示唆する回答傾向が一年次の研究同様に確認できたことになる。サンプル数が少ないため,多面的・多角的な事象を捉える力を育んでいけば,学んでいることは将来にわたって役立つという実感を生徒の中に醸成できると言い切れるものではない。ただこの結果は,2学期末の進路懇談が明日から始まるタイミングで実施したアンケートで得られたことに大きな意味があると感じている。勉強が短期的な目標達成の手段という意味合小・中学校 教科指導(社会科) 16 あまり思わない まったく思わない 社会科の学習で付いてきたと感じる力は次のうちどれですか?(1つ選択) 社会科で学習していることは将来にわたって役に立ちますか?(中学3年生) 図4-1実践前後のアンケート比較② いろいろな視点から考える力 7月末/12月末実施 覚える力 資料を読み取る力 つなげて考える力 比べて考える力 その他 実践前 n71 実践後n72 とてもそう思う そう思う 24.2 11.0 37.9 39.0 10.5 10.0 22.1 30.0 5.3 8.0 0.0 2.0 n95 小学5・6年生 実践前 実践後 n100 実践前 実践後 n71 n72 12.7 6.9 22.5 18.1 14.1 11.1 46.5 59.7 4.2 2.8 0.0 1.4 中学3年生
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