610 R3最終稿【藤本】
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・各時代の文化は外国とのつながりが関係する場合があるという児童の気付きを引き出すこと ・児童の気付きを,指導者が見えるーぺで可視化しながら明示的に価値付けることで,「外国とのつなが りに着目すれば文化を想像したり,文化に着目すれば外国とのつながりが見えたりしてきそうだ」と 図3-11 異なる事象を比べて共通性を見いだす 図3-12 可視化して明示的に指導 する とっても本研究の手立てが通用するものであることが伝わってくる。そして先の中学校における実践と照らし合わせるならば,研究の手立てに小中における汎用性があることも感じられる。 焦点化する資質・能力と見えるーぺという一つの道具を架け橋に,小中が連携して児童生徒を育むことができそうだという手応えをつかむことができた。 (3)異なる事象を比べて共通性を見いだす 小学校6年生の単元「明治の国づくりを進めた人々」の3時間目では,文明開化によってどんな変化があったのかについて調べ,変化の背景には西洋とのつながりを強めたことが関係していることを学習した。この授業ではそこで学習を終えるのではなく,本時で学習したことと,数か月前に学習した単元「貴族のくらし」の内容を比べて共通性を見いだすという学習活動も位置付けた。既習の単元「貴族のくらし」では平安時代に日本風の文化が生まれた理由に,政治の実権を貴族が握ったことや中国とのつながりが関係していることを児童たちは学んでいる。 二つの時代で学習したことを比べる学習活動を通して,想定していたことは次の2点であった。 いうような事象を捉える際の視点につながる知識の習得を促すこと 図3-11はその際の板書である。この学習で児童たちは,文化は外国とのつながりが関係する場合があるということだけでなく,例えば文化と権力が関係するのではないかという考えを発表した。「明治時代も外国とのつながりを強めたのは新しい政府だし,平安時代も遣唐使の廃止を決めたのは権力をもった藤原氏だから,権力をもった人と文化がつながることもあるんじゃないか」というのである。遣唐使を廃止したのは藤原氏という内容は誤りにしても,時代の為政者の考えや政策が,その時代の文化に影響を与える場合はある。時代の為政者に着目することで,国や時代の文化を捉えてみようとすることは決して間違いではない。また別の児童は「どちらの時代にも人々の生活に格差があった」という共通点を見いだした。時代の文化に着目することで格差が見えてくることもある。 想定を超えた児童らの豊かな発想に驚くと同時に,この手立てが小学生 でも可能であることが確認できた。 この活動では,指導者は単に共通項を見いだすことを促すだけでなく, 図3-12のように見えるーぺで可視化しながら,視点の関連性について明 示的に指導することが重要となる。 実践では児童が指導者の想定を超えてきたようなときに,とっさに指 導者が価値付けることの難しさも感じられた。しかしこれは2年間にわ たって実践を重ねる中学校の指導者も最初は同様であった。中学校の指 導者は今では多様な生徒の意見を見えるーぺを用いて価値付けたり,生 徒自身に選択することを促したりしている。今後も実践を繰り返すこと でそうした指導技術は磨かれていくだろう。 小・中学校 教科指導(社会科) 15 49

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