(2)情報を分類する 図3-8の予想が出された後,指導者が「みんなの予想を分けられそうだね」とつぶやきながら,見えるーペを提示した。たくさんの種類がある見えるーぺの中から指導者は予め七つの見えるーペに限定していた。第2章第2節(1)で述べたように,分類するという活動には二つのパターンがある。指導者が示す視点に即して情報を分類するパターンと,自分なりに定めた視点で情報を分類するパターンである。この実践は前者になる。本実践は小学校における初めての実践であり,児童にとってはこのとき初めて目にする見えるーぺである。最初から全ての見えるーペを提示することを避け,見えるーペとは何か,それを用いる意図はどういうところにあるのか,実践の中で少しずつ児童と共有していこうする指導者の意図が感じられた。 関東地方の主要産業は,どんな産業だと思いますか? 意外と 農業 1:太平洋側で降水量が多そうだから 2:首都 東京に向けた近郊農業が盛んそうだから しかし人口が都市に集まりすぎるため,農家が少なそう だと思う。 図3-10 視点に即して情報を分類する 48 図3-8 小学校5年生の予想 図3-9 中学校2年生(当時)の予想 小学5年生と中学2年生が形成している予想の質に違いは感じられるだろうか。ここでいう質とは,予想する際の目の付け所,つまり視点である。何の資料も示されていない状況で予想した中学生に対して,5年生の児童たちの予想は黒板に提示された1枚の写真資料(広大な庄内平野と一面に広がる水田,平野を流れる最上川,雪が残る山脈などの風景写真)を見ながらの予想という違いはある。学習経験や生活経験が異なるのだから,そうした違いがあるのは当然にしても, 5年生であっても1枚の風景写真のどこに着目すれば予想を形成できそうか,無意識か意識的かは別にして,児童なりの視点が働いていることは間違いない。 様々な予想を出し合った。気候や地形,技術などに着目した予想である。第2章第2節(1)③に示した図2-4を図3-9として再掲する。図3-9は,研究1年次に実践を始めた頃の中学2年生(当時)によるものである。 社会科はスパイラル型教科ともいわれる。第2章第2節(2)において,小中の見方・考え方に関する系統性について述べた。学齢による違いをどのように考慮して実践していけばよいか,あるいは考慮する必要がないのか,この5年生の姿を見たとき,その判断の難しさを感じさせるものであった。 授業はこのあと,これらの予想を分類する活動へと展開した。その様子を引き続き(2)で紹介する。 示された見えるーぺを見て,「何,これ?」「虫眼鏡やな」という児童の声に指導者は反応しながらも,それがどんなものか,何のためのものかはここでは触れず,「みんなの意見はどれと関係しそう?」と投げかけた。すると児童らは板書の情報と見えるーぺを照らし合わせながら,「このへんは地形のこと」「ここは気候」「農薬って技術?」「その他もあり?」というように,これまでも日常的に使っているかのような感覚で自らの意見を見えるーぺで価値付けた。次時には図3-10のように,そうした視点ごとに,収集した新たな情報も加えながら整理し,その関連性がまとめられた。このようにして事象を捉える視点の習得を促していくのである。 この実践は筆者が児童の様子を参観することが主たるねらいで,社会科の授業を初めて参観した日に行われたものである。その段階であっても,指導者も児童も見えるーぺを当たり前のように使いこなしながら情報を分類・整理して学習が進められていた。その様子から,小学校の指導者にとっても児童に小・中学校 教科指導(社会科) 14
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