図3-7 学びの変容(全て原文ママ/①~③の数字は筆者による)①単元冒頭の予想 ②単元末の結論 ③振り返り (5)思考過程を振り返る ② ① 図3-6は,本節(1)で登場した生徒Aによるものである。1・2時間目の内容を「政府側の視点・課題」,3時間目の内容は「国民と政府の両方が着目すべきところ」,そして4時間目は「国民の視点・課題」として分類している。本節の冒頭に示した表3-1のねらいと比べてみると,その内容を的確に捉えていることがうかがえる。 この分類をもとに,生徒Aがまとめた単元の問いに対する考えが,図3-7の②である。図の①と②を比べると,自分で選択した見えるーぺが変化している。「政策」と「人権」という視点を削除した理由は定かではないが,同じ「つながり」という視点を残した理由は,①②③の記述から判断できる。生徒Aは分類した結果から,同じ「つながり」でも,それは国民同士のつながりではなく,国民と政府のつながりが民主政治の実現にとっては大切であるという考えに至ったのである。 このまとめをもとに,単元の学習を生徒Aはどのように振り返ったのか,続いて紹介する。 学習の振り返りにおいては,はじめとおわり(図3-7中の①・②)を比べて振り返るよう,指導者から指示された。その際,内容を振り返るのか,方法(問題解決のアプローチ)を振り返るのかなど,指導者から細かな指示は出ていない。事象を捉える際に,半ば無意識に働かせている視点を可視化して,明示的に価値付けることを繰り返してきたのだから,内容の振り返りのみならず,問題解決のアプローチについても言及する振り返りができる生徒が増えてくるはずだと考えているためである。 生徒Aの振り返り(図3-7中の③)は内容に加え,方法についても言及している一例である。指導者からの明示的な働きかけがなくても,方法について振り返る記述はまだまだ少ないが,珍しいものではなくなってきている。 ただ,そうした記述の中でも生徒Aの振り返りの記述は他のものとは明らかに異なる。その異なる点は,「内容について知らない知識があったとしても,視点をもっていればある程度の予想は立てられそうだ」という趣旨の記述にある。この生徒Aの記述は,多様な視点をもつことや多面的・多角的に捉えることの汎用性や有効性に気付いているものであり,正に視点を自覚的に運用しようとする記述といえよう。 第2節 小学校での実践 先の中学校の実践は手立ての具体が伝わるよう,単元を通して紹介した。この焦点化する資質・能力を高めるための手立ては,小学校で行うとどうなるのであろうか。B小学校5,6年生の実践の中から,部分的にはなるが小中の系統などについて特筆すべきところに絞って紹介する。 (1)未知の事象について予想する 小学校5年生「米づくりのさかんな地域」の単元冒頭,児童らは指導者がスーパーで撮影してきた米売り場の様子や商品写真などを見ながら「運んでくる人,大変そう…」「結構,高くない?」「コシヒカリは知ってるけど,こんな種類あるの?」といった素朴な意見や疑問をつぶやく。 そうした声をもとに単元の問い「庄内平野では,どのようにしておいしいお米をたくさんつくっているのだろう?」が設定されると,児童たちは1枚の写真資料と生活経験や学習経験をもとに,図3-8の小・中学校 教科指導(社会科) 13 ③ 47
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