図3-5は,本節1項で取り上げた生徒Aによるものである。表3-1と照らし合わせて見ていただきた(3)異なる事象を比べて共通性を見いだす 単元の4時間目には,同じ事実を扱う記事にも関わらず,情報の受け手の印象が大きく変化しやすい二つの記事を比べる学習活動(図3-4)を設定した。順に示した記事によって印象が変化した生徒らに,「なぜ同じ事実なのに印象が変わったのか」と指導者が問う。この問いによって,生徒らが情報には送り手の主張が含まれる場合があると気付いて「情報を読み解く際には主張に着目する必要がある」という視点につながる知識の習得を促すことが指導者の想定であった。しかし, 実際には授業を行 った3学級全てで,生徒から一番に返ってきたのは「事実を捉える視点が記者によって違うから」という応答であった。 この反応は想定とは異なるものであったが,継続してきた実践研究の手応えを感じられるものでもあった。多面的・多角的に事象を捉える力を育むための様々な手立てが,記者の主張が異なるのではなく,事実を捉える視点が異なるという反応を引き出したものとして捉えたい。 授業は二つの記事の共通性を見いだしながら「公正な世論を形成する私たちに求められることって何だろう」という問いについて考え,次に図3-5のように思考ツールを用いて本時のねらい(表3-1)に迫った。 (4)情報を分類する 単元の最後にあたる5時間目は,単元の問いに対して自分の考えを形成する時間である。見通しをもって考えをまとめることを促すために,本時までの学習で蓄積してきた自身のポートフォリオを見ながら自分なりに分類し,分類ごとに名前を付ける活動を位置付けた。 学習してきた内容や考えをどのように分類するか,生徒たちの分類の仕方は多様であった。それぞれの内容の捉え方に生徒なりの視点があり,働かせている視点の違いによって,同じところに線引きして分類した生徒同士でも名付け方が異なっていた。 いが, (4)思考過程を振り返る 図3-6 学習してきたことを分類して名前を付ける 図3-4 2つの記事を比べて共通性を見いだす様子 図3-5共同編集機能を活用し,グループで問いに迫る 46 小・中学校 教科指導(社会科) 12
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