610 R3最終稿【藤本】
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よりよい民主政治の実現に向けて大切なことは何だろう 選択・判断す 実践はA中学校の3年生と,中学校の校区内にあるB小学校の5年生と6年生において実施した。 義務教育の最終学年となる中学3年生に続き,小学校の実践について紹介する。 第1節 中学校での実践 表3-1 単元「民主政治と政治参加」学習の流れ 1 ・民主政治を担保するための一つのしくみである多数決が,公正では 中学3年生の公民的分野「民主政治と政治参加」では,表3-1に示す流れで学習を進めた。表3-1中に一部,斜体字になっている箇所がある。本来,どの時間においても視点の自覚化を促すために,指導者が随時可視化して明示的に指導することが大切である。しかし1~4時間目には指導者が可視化して明示的に指導することをあえて控えた。斜体字になっているのはそのためである。先にも述べたように,A中学校は昨年に引き続き実践を進めた学校である。考えを形成する過程で働かせた視点を,指導者による価値付けではなく,生徒自身が考えることを本単元では特に重視したのである。 単元は,複数の解が想定される単元の問いに対して,毎時 の学習をもとに考えを形成する構成である。GIGA端末の学習支援ソフトの思考ツール(クラゲチャート)を用いて,ポートフォリオ形式でまとめながら単元の学習を進めた。単元の流れに沿いながら,視点の習得・発揮を促す実践と視点の自覚化を促す実践を交えて紹介する。 (1)未知の事象について予想する 設定した単元の問い(よりよい民主政治の実現に向けて大 切なことは何だろう)に対し,既有知識や生活経験に基づい て予想を立てた。生徒Aの予想を図3-2に示す。 この生徒は,学習支援ソフトの共有フォルダ内にある見え 44 ない場合もあるという気付きをもとに単元の問いを設定する ・既有知識や生活経験から,単元の問いに対する考えを予想する 2 ・選挙区制と比例代表制それぞれの良し悪しを整理することを通して, 二つの選挙制度を併用しているのは,よりよい民主政治の実現に向 けた一方策であることに気付く 3 ・低い投票率や一票の格差などの課題があることを資料から読み取り,よりよい民主政治の実現のためには制度上の改善のみならず,主権者の意識や行動改善も必要であることに気付く 4 ・発信される情報によって自分たちの考えが変わる体験を通して,世 論をつくる自分たちは,情報を多面的・多角的に捉えることが必要 であることに気付く 5 ・単元で学習してきたことを分類し,単元終末の考えをまとめる ・単元冒頭時と終末時の自分の意見を比較し,考えの変化を振り返る 第3章 小中の実践の具体 単元の問い 民主政治と政治参加(全5時間) 主なねらい 小・中学校 教科指導(社会科) 10 習得・発揮 予想する る 比較して 共通性を 見いだす 分類する 図3-1 単元のポートフォリオ 図3-2 生徒Aの単元冒頭の予想(原文ママ) 視点の 自覚化 可視化して 明示的に 指導する 思考過程 を振り返る

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