図2-7 社会的な見方・考え方 図2-6 共有フォルダ上の見えるーぺ から視点を選択する (8)文部科学省『21世紀を生き抜く児童生徒の情報活用能力育成のために(後編)』2015.3 https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/08/07/1369631_6_1.pdf2021.8.19 (9)細谷功『具体と抽象-世界が変わって見える知性のしくみ』2014.11 (10)奈須正裕『資質・能力と学びのメカニズム』2017.5 p.181,185,189,197,200 (11)前掲(2)p.19 し,視点ごとに名前を付けた。「○○という視点に着目して考えたんだね」「こういう視点から考えることは大切だね」というように,毎時の活動の中で児童生徒が発揮している視点を,見えるーぺを用いて可視化して価値付けながら,明示的に指導する。可視化して明示的な価値付けを繰り返すことで,多様な視点から事象を捉えていることの自覚を児童生徒に促し,問題解決のための道具化,方略化を図る。 この見えるーぺは,授業を行う際に教室前方に一覧掲示し,学習支援ソフト内の共有フォルダにデータとしても保存している(図2-6)。児童生徒が考えを形成する際に参考にしたり,形成した自分の考えが,どの視点に関わるものか特定のものを選んで貼り付けたり動かしたりするなど,必要に応じていつでも自由に使用できるよう にしている。 なお社会的な見方・考え方については,小学校学習指 導要領解説の社会編に,小中の系統性(11)がまとめられ ている(図2-7)。示されている社会的な見方・考え方の 中には,位置や空間的な広がり,相互関係など,小中学 生にとって抽象的な印象を受けるものもある。 使用する見えるーぺは図1-1(p.1)に一例を示したよう に,なるべく具体性のあるものにしている。その分,数 は増えるが小中学生が事象を捉えるための視点を習得し, 自覚的に発揮できるようにするためには必要であると考 えている。学齢が進んだ中学生ほど,見えるーぺの数を 増やせばよいのか,抽象度を高めて減らしていけばよい のか,実践を進めながら見極めていく。 ②自らの思考過程を振り返る 課題解決の一方略として多様な視点を自覚的に働かせて事象を捉えられるようになるには,自らの学びを振り返ることも有効である。具体的には単元冒頭の考えと単元終末の考えを比べたり,単元終末の自分の考えと他者の考えを比べたりする活動などが想定できる。その際,単に自身の考えの変容や自他の考えの違いを比べると,習得した内容に関する変化や違いについて振り返る児童生徒は少なくないだろう。大切なことは,何を振り返るかである。多面的・多角的に事象を捉えることの自覚的運用を促すためには,自他の考えに内在する視点の変容や違いについて繰り返し振り返る必要がある。「視点に着目して振り返りましょう」というように,指導者が明示的に働きかけていくことも重要であろう。 その一方で,いつまでも指導者が何を振り返るのか明示していては,多様な視点から事象を捉えるという課題解決の方略について自覚的に調整しようとしているのか見取りにくい。中学校の研究協力校は2年目の実践となる。昨年から見えるーぺを用いて思考過程を価値付けている中学校では,指導者が何を振り返るのかについて明示しなくても,内容ではなく方略について調整しようとする生徒が少なくないはずである。見えるーぺによる思考過程の価値付けの効果を検証する意味でも,中学校では振り返る際の指導者の働きかけは最小限にとどめて実践に臨もうと考えている。 小・中学校 教科指導(社会科) 9 43
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