④指導法や学び方に関して自分が知っていることを 最後に,家庭教育支援を進めるためには,学校のマネジメント力がこれまで以上に必要になってきていると考えている。子どもたちの学びの場を学校はもとより,それぞれが帰属する家庭や地域社会を視野に入れた取組にするということである。そのためには,教員一人で何事もやり遂げることを目指すのではなく,子どもたちをとりまく人々,つまり保護者や地域コミュニティと学校の関わりをとらえなおして整理する機会を,設けることが必要である。授業の内容を保護者啓発につなげ,保護者の果たすべき課題を意識化できるしかけを取り入れた授業実践がみられた。 おわりに 入した情報モラルに関わるアンケート調査の個人の結果を見ながら,家庭で何ができるか考えてもらうことである。すでに,ゲーム依存などの傾向が見られる子どもの場合,その傾向だけを伝えても,その家庭の教育支援にはならない。これは,情報モラルに限ったことではないが,背景にある状況を読み取って,寄り添いながら保護者に問題意識をもってもらうこと,保護者が主体的に取り組めるように,「一緒に考えましょう」という姿勢をもって,親子の関わりを深める働きかけをすることである。 つまり,これまで行ってきた学級通信やホームページでの発信を見てもらえるように工夫を入れること,見てもらえたら「よその親はどのように考えているのかな。」と,保護者にとって参考になり,自分ができることに気付くことができるような内容にすること,そして情報モラルのことについて懇談会があるなら,保護者同士で話してみたくなるような,少しずつでも学校の取組に目を向けて足を運んでもらえるような取組をしていくことが大切である。 これらのことは,社会に開かれた教育課程を具現するためにも極めて大切なことである。つまり,情報モラル教育の充実を図るためには,家庭教育支援を意図した取組の推進が不可欠であり,今後はそのための教員の研修も一層必要となってくるものと考える。 2年間に亘り,情報モラル教育推進のためのSTPDサイクルを生かした校内研修会を中心に,研究を行ってきた。学校が,子どもたちの情報モラルの育成について高い意識をもって取り組めるよう,1年次研究では授業実践を目的とし,2年次研究では(23) 藤平敦『月刊生徒指導若手教員の力を引き出す研修でつかえる 生徒指導事例50』学事出版 2016.12 p.89 (24) 白鳥信義『教師の意識を変える校内研修マニュアル』学事出 2010.6.10 p.18 (25) 前掲(24) 学校を軸として家庭教育に働きかける実践(授業を通して働きかける・懇談会で働きかける)を目的とし,研究を進めてきた。それは,いうまでもなく,情報社会で暮らす子どもたちにとって,情報モラルが必須だからである。 しかし,「はじめに」でも述べたが,学校には多くの教育課題がある。この現状の中で,情報モラルを指導する教員の力量を高めていく必要があり,学校教育を軸として進めていくという視点が重要になってきている。しなければならないと義務的に取り組むのではなく,教員が自ら学びながら動けるようにすることが,研修をマネジメントする上で大変重要であると考えている。 Judith Warrem Little(1981)は同僚性について四つの特徴的な行動が見られると述べている(24)。 ①教員が実践について語り合うこと ②指導と管理に関わる実践について互いに見合うこと ③カリキュラムの立案,デザイン,調査,評価に これらの同僚性の四つの特徴から「『同僚性』を中核とした学校づくり」の重要性について佐藤(25)も述べている。それは,「学校現場は多くの管理の論理で動く学校から,学びの論理で動く学校に転換すること」としている。 研究協力をしてくださった竹田小学校,修学院小学校の校長先生と協力員の先生をはじめ,教職員の方々の,先に上げた「同僚性」を目の当りにし,情報モラル教育の充実に向けた取組の一つにこの研修会のモデルが想定以上に機能したと感じた。全面的に協力してくださった教職員のみなさま,情報モラルの授業を輝きにあふれる目で学習してくれた子どもたち,参観日や懇談会で家庭での情報モラル教育の意識や子どもとの関わりについて聞き取りに答えてくださった両校の保護者のみなさまに,心より感謝している。 一緒に関わること 互いに教えあうこと 小学校 情報教育 30
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