次に,12月に特別活動の時間を使って人権啓発参観で行った4年生の授業を報告する。 図4-4は,4年生の人権学習での指導案である。 ④インターネット上に写真を上げることについて知識が 小学校 情報教育 25 A校4年生では,東日本大震災での原子力発電所の事故後,放射線漏れの不安が先行し,正しい知識がない中で多くの人がデマを信じたことで,避難者に対しての人権侵害が起こった事実から考える学習をした。授業では,他のデマを信じてしまった事象からインターネットによる情報活用の問題点について調べた。ここで取り上げた他のデマは, 2016年に熊本地震の際に,街の中にライオンがいるという内容の言葉とそのように写真を合成したものをツイッターで発信し,1時間の内に2万件に広がった,どちらも心理的な不安からデマが拡散した事象である。不安な気持ちがあるとデマが拡散しやすいことや,インターネットを活用すると一度に多くの人に発信されることから,情報を受け取る私たちはどうすればよいのか考えさせた。相手の気持ちを考えることや,本当の状況を知ろうとすることが大切であると気付き,一つの情報を鵜呑みにして,安易に行動することで,誰かを傷つけることがあってはならないことを考えられるようにした。 A校のように,これまでの人権教育のカリキュラムの中に,情報モラル教育を取り入れて実践していくこと,その機会をとらえその都度,保護者啓発を意識した取組を行うことは,情報モラル教育の充実に向けてより望ましい姿と考えられる。 (3)総合的な学習の時間の単元としての実践 総合的な学習の時間として取り組んだB校5年生の授業の実践である。児童実態を分析する中で学習課題を一つに絞りきることよりも,出てきた課題を全て授業にしたいと考えられた。次に,児童実態から分析する中で出てきた課題について示す。 ①SNSなどの文字でのやりとりについて認識が甘いこと ②パスワードについて「無し・わからない」が半数以上 いることから情報セキュリティへの理解が必要なこと ③さらに,インターネット内での友だちがいるとした子 どもが数名おり,知らない人とのつながりについて考 えさせる必要があること 無いこと そこで,これら四つの課題を組み合わせて,情報モラルの学習を総合的な学習の時間の単元として行うことにした。子どもたちは,この学習で,ICT機器や情報社会の特性に関する知識を得ること,自分自身に関すること及び他者や社会との関わりについて考え,自分がこれからどのように情報とつき合い,情報機器を扱っていくかということについて考えられるようになることを目的とした。 図4-4 4年生デマ拡散による人権侵害について学ぶ指導案
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