このように,これまでの活動で子どもの実態から見出した課題から一気に授業づくりを考えてきたことは,授業実践に結びつけるための効率的な学びとなり,授業を実践する教員にとっては研修会の成果物となった。しかし,学年によっては,授業だけでなく懇談会の計画までが目標であったが, A・B校共に,授業の計画までに留まった。研修会の中だけで授業と懇談会の二つを同時に計画するには時間的に難しかった。ここまで学年部の話合いの中で家庭教育支援に関する内容については,どの 本研究情報モラル校内研修会を踏まえての授業 実践の成果の詳細は,1年次研究に記述している。 今年度は,授業実践の中でもとりわけ,家庭教育 支援を授業参観の中で積極的に取り入れたA校5年生部会の参観日での実践について報告する。 ている。これらのことからも,この研修会は繰返し実施していくことも可能であると判断されたことから,授業の実践へとつながる効果的な研修ととらえられたことがわかった。 図3-9は,B校1年部会で作成された指導略案(授業アイデアシート)である。 1年部会は,児童の実態から「ゲーム機とうまく付き合うために」というテーマを決めた。導入では,ゲームをしている時間や家庭での約束の有無について全体に問うことで子どもたちが自分たちの実態を把握することによって,自分たちの課題だと感じられるようにしている。展開部分の発問も二つの大事なものに絞られており,終末は学んだことを活用して自己決定するように計画された。 図3-9 授業アイデアシート 学年部においても多くの視点が提示,共有されており,結果,実践では授業と家庭をつなげる工夫が随所になされていた。 (4)授業の実践 図3-10は,STPDサイクルを生かした情報モラル校内研修会「D(Do)授業実践」を示したものである。 指導内容は「情報を扱う意識」である。それは,5年生の実態として,自分専用の通信できる機器の所有が72%あること,SNSのアプリであるLINEの使用が39%あること,インターネット上の写真のやりとりについて理解不足である実態が28%あることなどによる。そこで,友だちと一緒に写っている写真をインターネットで見られるようにすることについて,学習で考えられるようにした。 教材は「LINE(株)『楽しいコミュニケーション』 を考えよう!(ネットコミュニケーション・リテラシー教育)写真編」を活用し,特別活動で授業実践をした。本教材は,人によってとらえ方に違いがあるということに子ども自身が気付くような展開がされている。違いが出やすい感覚的な言葉について,それぞれどうとらえているかを出し合い,とらえ方の幅が広いことなどを簡単に確認しあった後,インターネットにアップされたら嫌だなと感じる写真を選び交流する活動などを通して,相手のことを思いやって適切にコミュニケーションをとる大切さについて考えるものである。 体験活動もあることで,子どもたちは非常に意欲的に活動していた。また,この学習で人によってとらえ方が違うことがあることを目の当りにしたこと,インターネットにアップされたら嫌だと思う写真が「クラスの仲間内でもこんなに違うのか。」ということに気付き,これからの使用場面を考えて具体的な想定をして考えられたことは,非常に意義のある学習となっていた。 そして,保護者には授業を見てもらうだけでは なく,家庭での情報モラル教育についてえるよう図3-10 情報モラル校内研修会の「D(Do)」関する内容 小学校 情報教育 15
元のページ ../index.html#17