図3-2は,校内研修会で用いたものである。体験することや教えることによって,高い割合で記憶に残ることがわかる。家庭教育支援を念頭においた懇談会で,保護者に情報モラル教育について主体的に行動してもらうためには,体験型にすることが効果的であるということを確認した。 図3-3 懇談会を想定したブレインライティング635法 実際の懇談会であれば,わが子を念頭に行うが, 研修会ではクラスの中の気になる子どもをそれぞれ念頭において,「○○さんが将来幸せに暮らすために,必要なことは何ですか」という問いに対して必要だと思うことを,1行目のA・B・Cの欄を使って一人で三つ書いた。それを,図3-3内の絵にあるように,隣に回して,次は回ってきたワークシートの二行目にそれぞれ上のA・B・Cから連想される他のアイデアを書いていった。このように,6人程度のグループで三つずつ書いたアイデアを隣へ5回程度回すという手法で,教員であれば10分でワークシート1枚に18のアイデアが,6人グループのワークシートには合わせて108のアイデアが出た。 聞いたことは 見たことは 聞いて見たときは・・・20% 話し合ったときは・・・80% 教えたときは ・・・10% ・・・15% ・・・90% て記憶に残る割合に差があることを示したものである。 「記憶の残る割合」 学校から保護者に働きかける機会に,授業と懇談会が挙げられる。一つ目は,子どもを通して,時には一緒に考えてもらうような授業参観,二つ目は,情報モラルをテーマにした保護者懇談会などである。懇談会では,情報モラルの知識を教員が伝えることに重きをおくと,保護者は聞く活動が大半になり,低い割合でしか記憶に残らない可能性がある。効果的な懇談会を考えるならば,情報モラルのエッセンスの入った体験を入れることが望ましいと考えられる。子どもの将来を考えることを通して,今,家庭でできることを考え,情報モラルについて家庭の様子やそれぞれの意見を出しやすい場を設定することで,家庭の教育力の向上につなげるという考えで進めた。そこで,家庭の様子やそれぞれの意見を出しやすいワークショップについて,体験をすることにした。 <体験1> 本来,懇談会とは,学校が保護者に対して一方的に知的なことを教え込むことや,学校の様子ばかりを報告するものではない。保護者が普段の悩みについて,周りはどうしているのかなど,話し合える機会となるものである。大事なことは,例えば同じ学齢の保護者同士のように,状況が近しい仲間で,悩みを出せて一緒に策を練れるような話合いになることが挙げられる。また,保護者が多くのアイデアを出し合えて,現状できることに自身で気付くようなことも挙げられる。つまり,懇談会に参加したことで心が少し晴れるような,そして,家庭での子どもへの関わり方について考え直し,行動化につながるような,懇談会を進めたい。そこで,次のようなワークショップをした。 図3-3は,ワークショップの内容である。 基本ルール ⑴絶対に批判しないこと ⑵自由に意見を出すこと ⑶質より量を重視すること ⑷アイデアを発展させること このワークショップは,ブレインストーミングの手法を用いて,連想される言葉を三つ書いていくだけで,短時間に多くのアイデアが出る仕掛けがある。それは,始めに自分が書いたアイデアが,グループの人の手にわたって付け加えられることにより,新たな視点を得ることができ,周りのアイデアにも大切なことが同じように出てくることから,保護者にとって子どもと関わる上での気付きになる。 次頁図3-4は,ワークショップで活用したシートである。 図3-2 記憶に残る割合 流れ ①個人でアイデアを出す ②最後に手元に戻ってきたシートの中で,新たな 気付き,大切だと思うことに印をつける(3~5つ) ③印をつけたことを元に 話し合う ④グループでの話合いを 発表する 小学校 情報教育 10 ○○さん(気になる子ども)が将来,幸せに暮らすために,必要なことは何か
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