001総教C030705H29最終稿(大栢)
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よって,これらの課題解決に向けて,コミュニケーションを行う目的や場面,状況などに応じて,生徒の興味・関心が高い話題や,日常的・社会的な幅広い話題について,英語による情報や考え等を理解し,これらを活用して自分の考えや気持ちを表現したり伝え合ったりする対話的な言語活動を重視した学習・指導と評価を行うことが必要であると考える。 (2)「授業は英語で行う」ことのねらい 新学習指導要領解説では,授業における言語活動のさらなる充実を図るために,次のような内容が記載された。「生徒が英語に触れる機会を充実させるとともに,授業を実際のコミュニケーションの場面とするため,授業は英語で行うことを基本とする」(10)ことが明記されており,現行の高等学校学習指導要領において記載された内容が,今回は中学校にも適用されたことになる。その目的については,「『授業は英語で行うことを基本とする』とは,生徒が日常生活において英語に触れる機会が非常に限られていることを踏まえ,英語による言語活動を行うことを授業の中心に据えることを意味し,さらに,教師が授業中に積極的に英語を使用することが,生徒の英語使用を促すことにつながり,生徒とのやり取りが豊富になる。(中略)生徒が積極的に英語を使って取り組めるよう,まず教師自身がコミュニケーションの手段として英語を使う姿勢と態度を行動で示してくことが肝心である。」(11)としている。また,「小学校の外国語活動における教師や児童の豊富な英語使用の実態や,それを経験した児童の英語が使えるようになりたいという学習意欲の高さを中学校の学びに生かすためにも,このような環境づくりが重要」(12)とされている。 言語の学びにおいては,たくさん聞いたり読んだりして学ぼうとする言語に触れることと,実際に言語を使ってコミュニケーションをする経験が重要である。よって,今回の方針は,生徒のコミュニケーション能力の育成をより重視したものであるといえよう。つまり,指導者,生徒双方が授業での英語使用量を増やすことに加え,指導中心の授業から,活動中心,つまりコミュニケーション能力の育成を重視した授業へと移行していくことが求められていると考える。 しかし,学校現場では「授業は英語で行う」ことを基本とする言語環境をどのように構築していくかを不安視する声が多く上がっている。 一般的な公立の学校では,英語習得状況の異なる生徒が一つのクラスに混在している中で,「授業は英語で行う」ことに高いハードル意識をもつことは誰しも予想がつくところではあるが,中には難解な文法の説明など,これまで日本語で行ってきた説明等をすべて英語に置き換えなければならないといった誤解も見受けられる。そういった表面的な捉えではなく,なぜ今,「授業は英語で行う」ことが求められているのか,これまでの英語教育の課題を見極め,日本の英語教育の将来にとって必要な方針転換の意義を適切に理解して,学校現場で混乱なく実践するための手立てを考える必要がある。 (3)英語科における主体的な学び 平成28年12月21日の中央教育審議会答申( 以下,答申)では,学校教育が育成を目指す資質・能力の三つの柱が明記され,①知識・技能の習得,②思考力・判断力・表現力の育成,③学びに向かう力・人間性等の涵養,協働して学ぶ態度,の三つからなる資質・能力を,「主体的・対話的で深い学び」の視点(以下,三つの視点)からの学習を通して育成していく方針を示した(13)。すなわち,学びの質に着目して,授業改善の取組を活性化することを今回の改訂では目指していると考えられる。学んだら終わりではなく,その知識を思考につなげ,他者との対話的な学びを通して自分の考えをさらに深めていくための授業をどのように設計していくかがこれからの課題である。 また,外国語教育における「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けては以下のようにまとめられている。 さらに,三つの視点の位置付けについては次のように述べられている。 外国語教育においては,質の高い学びに向けて,学びの過程を,相互に関連を図りつつ,改善・充実を図ることが必要であり,そのような過程で外国語によるコミュニケーションを通じて,自分の考えが深まったり更新されたりすることを児童生徒が認識し,自信を持つことができるような学習活動を設けることが重要である。(14) 3つの視点は,子供の学びの過程としては一体として実現されるものであり,また,それぞれ相互に影響し合うものでもあるが,学びの本質として重要な点を異なる側面から捉えたものであり,授業改善の視点としてはそれぞれ固有の視点であることに留意が必要である。(15) (下線は筆者による) 中学校 外国語教育 3

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