001総教C030705H29最終稿(大栢)
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第1章 英語教育の現状・課題とこれから 第1節 学習指導要領より のではない。しかし,このような条件下にあっても,学校及び指導者の努力次第で改善できるものもあると考える。 では,グローバル化に対応するために育成すべき英語の能力とはどのようなものなのだろうか。そのためには何をすべきなのだろうか。そして,現在求められている英語教育改革の主人公である生徒は,英語の必要性についてどのように考えているのだろうか。 生徒たちが今後直面する予測困難な社会では,一人一人が未来の創り手となることが求められ(6),学校教育を離れてもなお,主体的に学ぶ姿勢が問われるのである。ゆえに生徒が積極的に英語によるコミュニケーションを行うことができる能力を育む必要があり,生徒の主体的な学びを授業の中で展開することが求められる。そのためには,生徒自身が学習に見通しをもち,自身の目標設定や振返りを重ねながら英語でコミュニケーションをすることに楽しさや喜びを感じ,さらに自信をもって積極的にコミュニケーションへ向かう態度を育成する必要があるのではないかと考える。 教室では,多くの生徒たちは与えられたコミュニケーション活動に積極的に取り組んでいる様子が伺える。しかし,なぜその活動をするのか,その活動を通して何ができるようになるのか,といった目的と目標の明確化,さらに「今,自分はどのレベルにいるのか」といった自己分析・評価の共有化が生徒と指導者間において図られているかと問われれば,十分であるとはいい切れないのではないだろうか。 筆者は,目の前の生徒たちには,急速に変化するこれからの社会を生き抜くために,国際社会の中で,「相手の意向を理解し,表現や表現の仕方を工夫しながら,自分の考えや気持ち,伝えたい事柄を表し,積極的に英語でコミュニケーションを図ろうとすることができる生徒」に育って欲しいと考えている。また,その過程においては,目標を見据えた上で学習を進めることができるよう,できなかったことを克服するための学習方法を選択しながら主体的に学びへ向かう姿を目指したい。 そこで本研究では,生徒が主体的に英語でのコミュニケーション能力を高めようとする姿を目指し,生徒自身が学習に見通しをもち,自分の伸びを確認できるような,主体的な学びを促す授業設計を構築し,その評価の在り方について実践を通して検証する。 中学校 英語教育 2 (1) 京都市産業観光局『京都観光総合調査(平成28年)』2017.5.30 http://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/cmsfiles/contents/0000222/222031/28chousa.pdf p.6 2018.3.2 (2) 京都市教育員会『平成29年度 学校教育の重点』京都市教育委員会 指導部 学校指導課 2017.6 p.2 (3) 文部科学省『今後の英語教育の改善・充実方策について 報告~グローバル化に対応した英語教育改革の五つの提言~』2014.9.26 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/102/houkoku/attach/1352464.htm 2018.3.2 (4) 前掲(3) (5) 文部科学省『中学校学習指導要領解説 外国語編』2017.9 http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/07/25/1387018_10_1.pdf p.82 2018.3.2 (6) 文部科学省『新しい学習指導要領の考え方 ―中央教育審議会における議論から改訂そして実施へー』2017.9 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/__icsFiles/afieldfile/2017/09/28/1396716_1.pdf pp..9~10 2018.3.2 (1)英語教育における課題 現行学習指導要領は,英語を通じて言語や文化に対する理解を深め,積極的に英語でコミュニケーションを図ろうとする態度や4技能の総合的な育成をねらいとして改訂され(7),学校現場では様々な取組を通して指導の充実が図られてきた。 しかしながら,新学習指導要領解説では英語教育における課題が次のように指摘されている。「授業では依然として文法・語彙等の知識がどれだけ身に付いたかという点に重点が置かれ,外国語によるコミュニケーション能力の育成を意識した取組,特に『話すこと』及び『書くこと』などの言語活動が十分に行われていないことや,『やりとり』・『即興性』を意識した言語活動が十分ではないこと,読んだことについて意見を述べ合うなど,複数の領域を統合した言語活動が十分に行われていないことなどの課題がある。また,生徒の英語力の面では習得した知識や経験を生かし,コミュニケーションを行う目的・場面・状況等に応じて適切に表現することなどに課題がある」(8)ことが述べられている。 また,外国語の学習においては,「語彙や文法等の個別の知識がどれだけ身に付いたかに主眼が置かれるのではなく,児童生徒の学びの過程全体を通じて,知識・技能が,実際のコミュニケーションにおいて活用され,思考・判断・表現することを繰り返すことを通じて獲得され,学習内容の理解が深まるなど,資質・能力が相互に関係しあいながら育成されることが必要である」(9)ことが述べられている。

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