001総教C030705H29最終稿(大栢)
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・ 以前からパフォーマンス好きの生徒たちだったが, 複数領域を統合した言語活動の充実を図るため,指導者と生徒が学習到達目標を共有し,目標に対する自己評価や相互評価を行うことが,生徒の学習意欲や英語学習の達成感を継続的に高める有効な手立てとなった。 本年度の実践においては,ユニバーサルデザインという社会的な話題を扱ったため,教科書の内容理解と音読練習を重ねた上で自分の考えを伝え合うという領域統合の形式をとった。この形式は,日常的な話題や関心のある事柄を扱う際とは違い,非常に有効かつ必要なアプローチであったことが生徒と指導者の振返りからわかる。 生徒は自身が読み取ったり音読したりした内容について話すことで,それぞれの活動のつながりを実感していた。このように授業の中で小さな成功体験を重ねることで,実際の言語使用を通じて英語でコミュニケーションをすることの楽しさを実感し,さらに自信を深めていったと考えられる。 第2節 今後の課題について (1)指導者の振返りから見えた課題 実践を通して見えてきた課題を指導者の聞き取りから記す。 ・読んだ内容について自分の考えを表現するという目的をもたせることで,生徒の読むことへの意欲が高まった。領域統合型授業の効果といえる。 ・発信するための表現を教科書から学べるという意識につながった。 ・ペアやグループでの交流を通して,複数の視点から内容を捉え直したり,より深く理解しようとしたりする姿が見られた。 今回のパフォーマンスは確実にレベルがあがっていた。以前は単語レベルであったり,ノリで押し切ろうという雰囲気があったが,今回は自分の見立てでは90%の生徒がセンテンスレベル(文の状態で)発表ができていた。 ・低位生徒がすごく頑張っていた。システム音読をやっていなかったらできていないだろう。 ・単元ゴールを示すことによって,生徒自身もそれぞれの活動が次につながることに気付き,より一層表現活動を工夫するようになった。 ・言語活動においては,生徒に明確な目標と選択余地を与えることで,より主体的に取り組むことがわかった。 ・パフォーマンステスト時の発表者と聞き手とのやり取りについては十分とは言い切れなかった。 ・聞き手のスキルをもっと上げていく必要性を感じた。 ・総括テストも授業中の言語活動に合わせて変えていかなければならない。 ・パラフレーズ力は,日頃から指導者が意識をする必要がある。例えば,ALTの発話を生徒が理解できないときに,すぐに日本語に換えて伝えていたことに気付いた。安易に日本語に訳すのではなく,自分自身が様々な場面でパラフレーズのモデルを示していかなければならない。生徒とのインタラクションにおいても同じことが言える。 中学校 英語教育 28 これらの課題については以下の項で対策を考えていくこととする。 (2)発表者と聞き手とのやり取りについて 図4-5は実践後に「質問をしながら進める等,相手の反応を見ながら発表できたか」について問うたもの である。 聞き手に質問を投げかけながら発表を進めるなどの,図4-5 事後アンケート④ 相手意識のある発表ができたかについては,約30%の生徒が「できなかった」と回答している。パフォーマンステスト時には,即興性を意識した言語活動に迫るため,聞き手とインタラクション(やり取り)しながら発表を進めることを一つの目標としていた。しかし,やはり伝えることに精いっぱいのグループも見られた。今後は,より聞き手への意識をもってインタラクションの充実が図れるよう,徐々にメモのみでの発表を目標にすることも必要である。 また,読んで得た内容について自分のことばでまとめるという領域統合にはある程度到達したものの,発表を聞いて聞き手から質問するという領域統合には課題が残り,聞き手のスキルを上げていかなければならないと感じた。プレゼンテーション等の発表を聞いたとき,聞き手は「すごい。」「そうなんだ。」といったような,単なる感想に近い反応を示すことが多い。これは何も英語の授業においてのみ見られる現象ではないと思われる。発表内容に対して疑問をもったり,質問をしたりする力が非常に弱いのである。論理的,批判的,

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