これらの記述から,家でも練習を重ねた結果,それがよりよいパフォーマンスにつながり,自信をもてるようになり,英語学習への意欲がより高まっていることがわかる。また,パラフレーズすることに意識をもって取り組んだ結果,自分の表現の幅に広がりがでてきたことに喜びを感じている様子や,システム音読練習に組み込まれていたゴシップ読みやリテリング活動を通して,定着しにくいとされる人称代名詞や三人称単数形についても注意しながら表現活動をしていた様子が伺える。 図4-2は「授業中の練習と発表がつながったか」を問うた結果である。単元内のそれぞれの言語活動が最後のパフォーマンスにつながったと感じている生徒が約95%に上っている。「最後のパフォーマンスに向けて,見通しをもって練習できた。」「パラフレーズ練習やシステム 音読があったから,発表が充実した内容になった。」と振り返っている生徒もおり,それぞれの言語活動につながりのあることを生徒が実感できたといえるのではないだろうか。 図4-3は単元の最後に行ったパフォーマンステストにおいて,「英語で発表ややり取りを問うた結果であり,93%の生徒が楽しかったと答えている。 このように,①~③の事後アンケートからは,②目標に向かって見通しをもちながら,①よりよいコミュニケーションを 目指して自身に負荷をかけて取り組むことで,③最終的には英語でのコミュニケーションに対する達成感を味わうことにつながるといった過程を幾度も積み重ねることが,本研究の目指す「主体的にコミュニケーション能力を高めようとする生徒」の育成につながるのではないかと考える。 図4-2 事後アンケート② 図4-3 事後アンケート③ しかし,今回の実践において,数%の生徒がまだ英語でのコミュニケーションに達成感を味わっていないのも事実であり,このような生徒へのさらなる手立てについても考えていく必要がある。 図4-4は,実践の前後にとった「英語を学習する上で大切だと思うこと」についてのアンケート結果である。 また,単語をたくさん覚えることが大切だと思っている生徒が多数いるのは,B校において全校体制で英単語習得への取組が行われていることの影響であろう。 (2)指導者の振返りから見えた成果 領域統合型授業における言語活動の在り方や単元構想等,研究協力員への聞き取りから見えた成果について述べる。 図4-4 英語学習において大切だと思うこと ここからは,実践前と比較すると,自分の考えや意見を話したり書いたりすることの大切さ,表現することにつなげるために教科書を音読することの意義と必要性等をより感じるようになった生徒が増えたことが見てとれる。また,実践後には,文法の知識を増やす,一文一文日本語に訳す,問題をたくさん解く等の知識重視の言語活動への必要性を感じている生徒の割合が減っていることがわかる。これは,本研究で取り組んだコミュニケーションを重視した言語活動が,生徒の「伝えたい」という気持ちを促進した結果だといえるのではないだろうか。まずは,生徒の「伝えたい」という気持ちを高めることで,「より伝わるようにしたい」という思いが生まれるであろうと想像される。よりよく伝えるそのためには文法等の言語材料について学習していく必要があり,しっかりとした知識をつけていくことでよりよい表現が可能になるというスパイラルを,指導者と生徒が共有することが大事であると考える。そうすることで,知識に関する活動は生徒にとってより具体的な意味をもつようになるのではないでろうか。 中学校 外国語教育 27 n=79
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