001総教C030705H29最終稿(大栢)
27/32

第3節 パフォーマンス課題と評価 (1)パフォーマンス準備と相互評価 実践した単元のパフォーマンス課題については,最終的にはユニバーサルデザインについての自分の考えを述べるわけだが,他に何の情報もない状態でただ単に自分の意見を主張するだけでは説得力に欠けるため,自分がこれまでに収集した情報や学習事項を引用しながら論が展開できるように工夫させた。「読んだ」ことをもとに「発表する」という初めての形式のパフォーマンステストのため,ペアで協働しながら練習,発表を行う形態にした。発表自体はペアで行うが,発表内容は個々で展開・結論を述べることを条件とした。 教科書の記事や絵を参考にする生徒や,実際に指導者が自分の家のユニバーサルデザインやバリアについて紹介したものを使用する生徒もいた。これは指導者がモデルとなるパフォーマンスを意識的に提示してきたことに効果があったからであろう。すなわち,指導者の姿や使用する英語表現が生徒にとっては重要なインプットになるのだということができる。 表3-5は生徒が使用したパフォーマンステストに向けた展開メモである。 表3-5 パフォーマンステストに向けた展開メモ 展開メモ欄に書くのは,メモのみに留め,完全な文章はできるだけ書かないように指示したが,筋道を立てて論を展開するような発表形式は初めてであったため,英文原稿ではないものの,上記のように日本語で展開を書いてしまう生徒が多く見られた。第3学年においては,メモのみでの発表を目指したいが,現段階での日本語による原稿は実態に応じたステップアップのための手段と考え,最終的に目指す姿を示唆するに留まった。 また,聞き手からの評価を受けて,「できてるって思ってたのに意外とそうじゃないのか…」「ここ(相手意識)は全部○もらえた!」等,相互評価を通して自己を振り返ることで,よりよいパフォーマンスになるよう,ペアで練習に取り組む姿が見られ,相互評価が次のステップに向けての意欲につながることがわかった。 (2)ポスターセッション形式のパフォーマンス 今回の実践では,パフォーマンスをしながらも,よりよい発表を目指して成長していってほしいと考えた。そこで,ポスターセッション形式のパフォーマンステストを取り入れ,計四回の発表機会を設けた。 図3-6,図3-7はパフォーマンステスト時の生徒の様子である。生徒はユニバーサルデザインが施された実物を見せ,聞き手に触らせたり,実際にその実物を用いて実演を交えたりしながらパフォーマンスを展開していた。また,「一 図3-7 インタラクションをしながらの実演 方的な発表にならないようにはどうしたらいいのか」を,単元ガイダンスの段階から常に指導者から問われていたため,生徒たちは聞き手とのやり取りを随所に入れながら発表を進めていた。 発表後の生徒の感想には,「一組目のグループに聞いてもらったときより,四組目のグループに聞いてもらったときの方がうまくできた」とあったため,後で聞き取りをしたところ,「一回目の発表の時にうまくいかないところがあって,どうやったらいいかを工夫してその後の発表につなげた」と返答してくれた。生徒は「このくらいでよいか」と妥協するのではなく,よりよいパフォーマンスを目指して工夫を重ねていたことがわかる。 図3-6 パフォーマンスを展開する生徒 中学校 外国語教育 25

元のページ  ../index.html#27

このブックを見る