001総教C030705H29最終稿(大栢)
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表3-4 生徒のチャット用のワークシート い段階で「表現」につなげるための練習に達していたペアもあるが,ほとんどのペアには双方の学力の定着にバラつきがあった。そこでは,ともに寄り添い,サポートしながら徐々にペアのレベルを上げていったり,自分より少し上のレベルに一緒に挑戦したりと,自分たちに徐々に負荷をかけながら取り組む様子が見られ,協働的な学習の効果が確認できた。 また,パフォーマンス課題では図3-2(p.21)の展開①で示したように,教科書の登場人物の経験について述べるという設定があることから,ゴシップ読みの練習,すなわち三人称単数現在形や代名詞を使用しての音読が不可欠であることを生徒自身も意識しながら練習に取り組むことができた。 図3-5は,第2章第3項で示した自己評価シートに実際に生徒が記入したものの一部である。生徒の記録は,最初は「読む」ための練習から図3-5 伸びを見せる生徒のシート 始まり,徐々に「覚える」ための練習,そして「表現する」ことにつなげるための練習へと推移しており,この生徒の伸びが確認できる。 上位層の生徒は「表現する」ための練習に果敢に取り組む様子が見られたが,このような姿勢を示すであろうことは想像に難くない。しかし,このシステム音読と学びの過程を可視化した自己評価シートの活用にあたって目指したもう一つの視点は,英語が得意ではない生徒が自分の伸びをいかに把握し,自己評価できるかというところにあった。「伸びたことは,英語をちょっとは読めるようになったことだ。これからさらにうまく表現するためには英語の音読が必要だと思った。」こう感想に書いたのは,英語にかなりの苦手意識をもっていたが,パフォーマンステストの際は,パートナーが当日急に欠席をした中,一人で立派にパフォーマンスをやり遂げた生徒である。またその他にも,教科書の音読も十分ではない生徒が,「ペア練習だから迷惑がかけられない」と,一時間目の授業が始まる前に,「ここの読み方教えて」と,他の生徒のサポートを借りながら練習に向かう姿を見せた。このように,システム音読シートのレベル1であったのが2へ,そして3へと少しずつ伸びを 中学校 英語教育 24 見せた,その伸びを生徒自身が把握するとともに指導者が認め,評価することが次の学びへ向かう生徒の育成につながると考える。 また,家庭学習につながるよう,システム音読シートを個人読み用にも対応させた。単元を終えての生徒の感想の中には,「家でレベルを上げながら音読練習する時間を作るようになり,ことばを変えて話したりできるようになった。」というものも数多く見られた。 (4)インタラクションの活性化を目指して 生徒たちは会話をふくらませるための表現一覧表(表2-5<p.19>)を使用しながらチャット活動に取り組んだ。その際に,うまく伝えられなかった表現を自分で調べたり,友だちに聞いたりして,次の時間にその表現をもう一度使う機会を設けた。その際,相手意識をもってパラフレーズするなどの工夫をすることを伝えた。 表3-4は生徒のワークシートである。 この生徒はうまく伝えられなかった表現を英語に直してきており,その表現を用いて二回目の活動では一回目よりもうまくいったという振返りをしている。自分が伝えたい表現であるため,主体的に調べてくる生徒が多く,それが伝わったときの達成感は大きかったようである。 表中の”There are ~.”という記述は,指導者によるものである。生徒が”Fushimi has many delicious stores.”と表現していることに対し,このように指導者がパラフレーズして他にも表現の仕方があるということを積極的に示し続けることが大切である。 また,単にチャットを1分間続けるだけではなく,今日使ってみようと思っている表現を一覧から何個か選び,それらの表現を意識的に使用しようとする姿が見受けられた。生徒に活動について聞き取ったところ,「今まで,Oh, really?ばかり使っていたけれど,他の表現も使えるようになってうれしい。」と述べる生徒もいた。 「読む」ための練習からの伸び

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