001総教C030705H29最終稿(大栢)
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ズすることに挑戦した。この生徒は,最初は自分で考えて表現をする段階では筆が動かなかったが,ペアワークを通してコツをつかむと,その後は空欄にスムーズに書き入れていった。クラス全体で共有した際には,図3-4右部分の表現以外にも,”We are all OK about that.”という表現も飛び出し,生徒の想像力の豊かさを目の当たりにした。 また,パラフレーズ練習を実施するに当たり,旧学年の教科書も活用した。1年の教科書に載っている表現を,2年である今の英語力を駆使して,もっと豊かな表現に置き換えることが目的である。 1年生の教科書の活用にはもう一つねらいがあった。忘れたころにもう一度学習するインターバルトレーニングとしての活用である。学んだ言語材料を生徒が自由に操れるようになっているのかを考えると,間隔を置いて復習させる価値は十分にあると考えたのである。生徒はどんどん置き換え表現に挑戦していった。1年生の教科書の冒頭に近いUnitに出てくる”It’s my pen.”という表現を”It’s mine.”に言い換えている生徒もおり,つまずきがちな人称代名詞を駆使している様子が伺えた。また,”Are you in the judo, club?”を”Are you a member of the judo club?”という表現に変えながら会話を進めているペアもいた。 パラフレーズ練習以外にも,行間を読み取って会話を広げる活動も行った。指導者は,「1年生の教科書を使用することは,パラフレーズ練習だけにとどまらず,基礎・基本の定着を確認するのに非常に有効な手段で,生徒自身も1年の頃はそれなりに難しいと感じていた教科書をすらすら音読し,内容が理解できるようになっていた。自分の伸びを実感している様子が伝わってきた。」と述べており,この活動が生徒の学習意欲を高める手立ての一つになったということができる。 (2)教科書本文の内容理解 音読練習に入る前段階として,次の手順で本文の内容理解を進めた。 まず,コミュニケーション活動としての読み取りができるよう,単元の最初に「何のために読むのか」を生徒に提示することで,生徒が教科書本文を「読む」目的意識を明確にもつことができると考えた。授業の冒頭で指導者が何種類かの二つの写真を提示した。同じ用途の品だが,一つは通常のもの,もう一つはユニバーサルデザインが施された商品の写真である。何の中学校 外国語教育 23 違いがあるかを生徒とのインタラクションを通して明らかにしていった。生徒からの反応は日本語であるが,指導者はその発言を即座に英語表現に変えたり,ジェスチャーを交えたりしながら生徒とのインタラクションを進めた。また,指導者は写真をうまく利用しながら,本単元で学習する進出単語や表現を意識的に使用し,生徒のインプットにつながる導入を展開した。 その後,“ALTに日本のユニバーサルデザインやバリアについて自分の考えを伝える”というパフォーマンス課題を提示し,その課題達成のためにユニバーサルデザインについての記事や対話文等を読んでいくことを確認し,本文の読み取りを進めた。 表3-3は読み取りのポイントの例である。 表3-3 教科書本文の読み取りのポイント 内容理解に迫る際には,読み取りのポイントを与え,ただ機械的に読むのではなく,要点をつかむのか,詳細を押さえるのか,また整理しながら読むのか等,目的に応じた読みができるようになるように,ワークシートに工夫を加えた。生徒の感想には,「最初は概要をつかむのは難しかったけれど,だんだんコツがわかってきた。」「国語でもこういう読み方をしているから,それが役に立った。」というものがあった。 (3)システム音読練習 生徒たちにとってシステム音読練習は,ペアで相談をし,自分たちのレベルに応じたレベルを選択し,音読練習を進めていけるため,一つの教材の中で習熟度別の活動が可能となっている。中にはペアになった両方ともが高い理解力を有し,早

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