① 直訳にこだわらず,映像化してみる ② 完璧にこだわらない ③ 抽象的な表現をやめて,視点を変えて具体化する ④ 相手に対して分かりやすいことばを使う ①直訳にこだわらず,頭の中に思い描いたイメージの中で,どこか英語にできないかを探る。②本質だけを残し,思い切って情報をそぎ落とす。③例えば,「弱音を吐いた」と言いたいときは,実際どんな発言をしたのか等,事実ベースで具体化する。④幼い子どもに質問をされたとき,どのように話すかを思い浮かべ,幼い子どものもっている語彙で簡単に言い換える。このようなことを具体的にイメージさせながら活動を進めた。 中学校 英語教育 22 パフォーマンステストにおいては,相手意識をもってやり取りをしながら,パフォーマンスを展開することに焦点を当てたため,会話の流暢さ(fluency)に重点を置き,パフォーマンステスト後に発表内容を5文以上の英文でまとめる段階で正確さ(accuracy)に迫った。その際も,ただ“発表したことをまとめよう”という課題にするのではなく,“学校でユニバーサルデザインについて学習したことを,e-mailでアメリカに住んでいる友だちのDavidに知らせたくなった”という目的・場面・状況を設定し,「読んで」得た情報について,相手意識をもって「書く」という領域統合の言語活動に迫った。生徒の中からは,「外国ではユニバーサルデザインの考え方が進んでるんかな?」というつぶやきも聞こえ,“Please tell me about universal designs in your country.”という文でe-mailを締めくくっている生徒もおり,相手意識をもった「書く」活動となった。 また,パフォーマンス課題について認識した上で教科書での学習を進める中で,生徒たちからは「この(教科書の)表現使えそうやな。」「そろそろ回りのユニバーサルデザイン見つけなあかんな。でも,うちの家はバリアだらけかも。」という声も聞こえてきた。これは,生徒が見通しをもって学習を進められている一場面と捉えることができる。 第2節 それぞれの言語活動と学びの可視化 (1)パラフレーズ力を高める 生徒たちが何のヒントも与えられずにいきなりパラフレーズすることは難しい。そこで,指導者がヒントとして置き換える語句や文を提示することにした。第一段階として,一つの単語の置き換えから始め,徐々に置き換え部分を増やしていった。「いかに伝えるか」に焦点を当て,「こういう意味の単語があるはずだ」と思い込んでインプット中心になるのではなく,「いかに言い換えていくか」に意識の転換をするよう助言しながら指導を進めた。「正しい英語」にこだわるあまり,沈黙してしまうのではなく,とにかく正しい単語やフレーズを知らなくても「何とか伝えよう」という気持ちを示すことが大切であり,コミュニケーションの目的は「正確な英語を話す」ことではなく,「言いたいことを相手に伝える」ということ,そして伝わる表現は一つではないということを伝えていった。 その際に大切にした視点が次の四つである。 こうしてみると,やさしい英語への置き換えのコツは,まずは原文をやさしい日本語へ置き換えてみるとよいことがわかる。常に「この表現の意味は何か」を考え,理解したことをやさしいことばで表現する必要があるということである。 図3-3は教科書本文を生徒がパラフレーズしたものである。 図3-3 パラフレーズ練習用ワークシート① この生徒は,はじめ自分で二つの表現を紡ぎ出し,その後クラスで共有したときに,他の生徒から出た表現を書き止めている。この作業を繰り返すことで,表現の幅が広がっていくと考える。 図3-4の生徒のワークシートは図3-3を改良したものである。 図3-4 パラフレーズ練習用ワークシート② 自分の考えと他の友だちの表現が書き込めるようにし,ペア・グループ・全体で共有したときに,自分の中にはなかった発想と表現力が結果として自分のものになるよう工夫を加えた。ここでは,生徒たちは「賛成多数」という表現をパラフレークラスで共有したときに他の生徒から 出てきた表現 自分で考えた表現 クラスで共有したときに他の生徒から出てきた表現
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