表2-4 自己評価活動の段階 (43) 筆者一部改変 ことが大切である。自分は今,どのくらい英語が使えるのかの現在地を知り,目標を達成するためには今の自分の力とどのくらいの差があるのかその距離を確認する。そして,どのようにして目標までたどり着いたらよいのかの道順を考えることができるように,振返りの工夫をすることが必要であると考える。 しでも①~⑥の6項目に近づくよう学習意欲を維持させ,目標を超えた伸長がみられる生徒には,さらに⑦~⑩項目までの達成を目指す』といった目標を設定することなどが考えられる」(41)とある。 ここからは,指導者による評価は生徒の学びの過程を重視するものであるということがいえるのではないだろうか。また,自己評価は,できるようになった項目が少しでも増えたことを生徒自身が認識し,その伸びを指導者と生徒が共有し,さらに指導者が励ますことを通して,生徒の学習意欲を高め,主体的に次の学びへ向かう姿につなげるものであるべきだという捉えができる。 そこで,本研究の自己評価においては,単にA・B・Cという診断を自ら下すのではなく,聞き手から「どこができているか」を評価してもらい,その評価をもとに客観的に自己評価できるものになるよう工夫をした。大きな評価項目の中に,その下位項目を細分化し,評価者から○をもらうことで,少しでもできるようになってきているイメージをもたせられるようにしたいと考える。 (1)学びの可視化と自己評価の意義 学習への意欲を高めるための手立てとして,自己の学びを見とり自己評価をすることは,自分を見つめ直し,何の学習に力をいれたらよいかを確認したり,以前の自分に比べてどれくらい伸びたかを知り,次のステップへの自信をつけるために必要であると考える。 橋本(1986)は自己評価の意義について次のように述べている。「教育評価の最も重要な価値は児童生徒の学習の改善と向上にあるのであるが,学習を改善し向上させるかどうかは,結局は生徒自身の問題であって,教師の行う評価はこれに対して間接的影響をもつにすぎないのに対し,生徒の自己評価こそが一層直接的効果を発揮する」(42)としている。 つまり,学習を改善し向上させるためには,生徒自身の自己評価が直接効果を発揮するのではないかということができる。 また,授業において効果的な自己評価活動が行われるためには,学習過程に応じた段階的な編成をする必要がある。 表2-4は長瀬(1994)の示す自己評価活動の八つの段階である。この表が示すように,現在の自分を見つめることのみに着目するのではなく,その前提としての学習目標の設定や、自己評価を活かしてさらなる発展ができるような手立てを考える 中学校 外国語教育 17 (2)CAN-DOリストを活かした自己評価 平成23年,「国際共通語としての英語力向上のための5つの提言と具体的施策」において,各中・高等学校が学習指導要領に基づき,生徒に求められる英語力を達成するための学習到達目標を「CAN-DOリスト」の形で具体的に設定することについて提言がなされた(44)。 英語の授業においては,生徒の主体的な学びを促す「めあて」「課題」「まとめ」「振返り」を設定する上で,CAN-DOリストを効果的に活用できる。根岸ら(2016)は,CAN-DOリストを「①『言語を用いて何ができるか(CAN-DO)』という観点に基づいて,②児童生徒に求められる英語力を達成するための学習到達目標を,③4技能別に『~することができる』という形で設定し,④リスト化したもの」と定義付けしている(45)。つまり,生徒が使えることがCAN-DOリストの存在価値といえる。 また,投野(2016)はCAN-DOリストの効果的な活用法として,「①自己評価・②目標把握・③技能把握」の三つを挙げている(46)。つまり,CAN-DOリストを見て,①自分のできることを確認することで,今までやってきたこと,これからやるべきことを見通し,②文法や単語を学ぶだけでなく,それを身に付けたら何ができるようになるのかというゴールを明確化し,③自分の欠けている領域,身に付けたい力をしっかりと知ることができる。つまり,自分の英語力をセルフチェックし,学びの過程を可視化することで学習への意欲が高まると考える。
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