001総教C030705H29最終稿(大栢)
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③ <インタラクション(やり取り)> 生徒同士でよく行われるQ&A形式の定型文のインプットや,終始,指導者のあとに続いて読む音読活動とは違い,今求められる即興的な言語活動においては,指導者と生徒,あるいは生徒同士のインタラクション(やり取り)が生じる。 図2-9 領域をつなぐ言語活動の関連図 本文をチャンク(情報のまとまり)ごとに区切り,内容理解を促しながら音読練習したり,キーワードや絵を参考にしながら教科書本文の内容を要約したりできるように工夫している。このように,ただ機械的な音読練習や暗唱ではなく,教科書の本文の内容理解を通して,自分が「読んだ」内容をもとに「話す」ことにつなげるための言語活動につながっているのがシステム音読練習である。 和泉(2009)は「インプットが大事なことは繰り返し述べているが,教師からの一方的なインプットだけでは不十分である」「教師と生徒,生徒同士でのコミュニカティブなインタラクションが言語習得には必要である」(40)と述べている。できるだけ多くのコミュニケーション活動を教室内で行うためには,指導者と生徒のインタラクションを充実させることは言うまでもなく,生徒同士のインタラクションを中心とした授業を行うことが大切であると考える。 図2-9は領域をつなぐ言語活動の関連図である。 個人内でのインプット,インテイク,そしてアウトプットという一連の流れは,聞き手である生徒にとってのインプット,インテイク,アウトプットにつながり,そこにはインタラクションが存在することを示している。「読んだ」ことに関して「話す」といった領域統合型の授業を展開する際,そこには生徒同士での英語によるインタラクションがおこる。パフォーマンス課題を設定し,プレゼンテーションをする際にも,単に一方向の発表 中学校 英語教育 16 をするだけではなく,その内容について聞き手の生徒とインタラクションをすることで,そこに発表者と聞き手との関連性が生まれ,発表の内容自体がより充実したものになると考える。 家族や友人と些細な話題で楽しく話をする際,私たちはどんなふうに会話ふくらませているだろうか。相手の話を受け止めるために相づちを打ったり,会話をよりふくらませるために興味をもって質問したりしているはずである。英語においてもコミュニケーンをする際は同じようなことが行われている。 また,生徒同士のインタラクションは,用意された定型文での質疑応答等の練習ではなく,即興性のある言語活動において活性化されると考える。よって,生徒同士のインタラクションを充実させるためには,生徒自身がコミュニケーションを活性化させるスキルの必要性,必然性を感じ,そのスキルを自発的に使用することが重要であると考える。 第3節 学びへ向かう評価 本研究における学びへ向かう評価とは,生徒自身が自分の学びを把握する側面と,指導者がその学びの過程を共有し,認めたり励ましたりする側面の二つからなる形成的評価である。生徒自身が自分の伸びを確認し,自信をもって次の段階に進んだり,自己評価や相互評価を通してよりよい英語でのコミュニケーションを目指して主体的に学習を進めていくための支援となると考える。 また,パフォーマンステストにおいては,ルーブリックを用いた評価を最終的な結果として指導者が生徒に示したり,生徒が自己評価したりすることは,結果的には生徒に優劣をつけるための評価にならないかという懸念を筆者はもっている。ルーブリックを用いた評価基準においては,「~できない」というCの表記がよく見受けられる。Cの評価を示されたり,あるいは自分でつける生徒は,この先,「もっと勉強しなければいけないな。」と果たして思うようになるのだろうか,学習意欲がそこから向上することはあるのだろうか,と案じている。そして,そういった生徒はいつまで経ってもそのCの烙印を押されたままで,這い上がる余地も術も持ち合わせていないことも少なくない。 「各中・高等学校の外国語教育におけるCAN-DOリスト』の形での学習到達目標設定のための手引き」には,「『全ての生徒に求められるのは,設定した10項目のうち①~⑥の6項目を達成することであり,習熟に時間のかかる生徒にとっては,少

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