001総教C030705H29最終稿(大栢)
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「社会的な話題」に関して聞いたり読んだりして得た知 識や情報をメモしたり図式化したりした上で,その内 容を要約して話したり,それらに対する自分の考えや気持ちなどを話して伝えたりする,複数の領域を統合して行う活動を示している。(39) (下線は筆者による) 聞いたり読んだりした内容,すなわち受容活動に関して,話したり書いたりする発信活動においては,受容したことをそのまま発信するだけではなく,自分のことばで言い換えたり,簡潔に伝えたりすることが領域統合型の言語活動が目指す自然なコミュニケーションの形であると考える。 図2-6は領域統合型アプローチとパラフレーズ力の関連性を表している。前述のようにインプットしたものをそのままアウトプットするのではなく,自分 の中に取り込み,自分のことばとしてアウトプットする過程を示している。 図2-6 領域統合型アプローチとパラフレーズ力 新学習指導要領解説には次のように示されている。 生徒は「英語で言いたいけれど言えない。」「英語を聞いたり読んだりして理解できたけれど,その理解した内容を自分のことばでうまく英語で伝えることができない。」などの状況に追い込まれる。しかし,この過程を経ることが生徒の英語力を高める上では重要であると考える。なぜなら,このように追い込まれた学習者にとって,指導者が話すteacher talkや他の学習者の発表などが,その生徒が必要とする表現や言語知識をインプットする場面として有効に活用される機会となり得るからである。相手に伝えるというアウトプットが引き金となり,学習者のインプットへの注意や意識が高まり,表現や文法的な情報をより積極的に活用しようという態度につながると考える。 「この日本語を英語にしなさい」というような問題を,日々のワークシートや総括テストで目にすることは多い。しかし,これを繰り返していくうちに,生徒は自分の伝えたい単語や表現が英語に存在するに違いないと思い込んでしまいがちになると考える。つまり,英語を学習するに当たり,こういった設問により生徒たちに「一つしかない正解を見つけなければならない」と思い込ませている可能性がある。「先生,お節料理とか初詣ってなんて言うんですか?」これは,冬休みの日記を書く活動をする際に,必ずといっていいほど生徒から出る質問である。生徒の多くは「辞書」が”dictionary”であるように,語彙や英語表現について1対1の関係で和英表現が存在するという考え方をしている。そして,英作文するにあたって,まず日本語で文を考え,大抵の場合,その中に自分の知っている英語で言えない表現があれば,その時点で英語に直すことを諦めるか,和英辞典やインターネット検索を使用して英単語を見つけようとするかどちらかに二分される。和英辞典を引いた場合,辞書に記載されている最初の表現を使用する傾向があるため,例えば,「ぼくは運動神経がよくない。」という文は,”I don’t have a good motor nerve.”と表現することになるだろう。それをコミュニケーションの場で使用したとして,その表現は調べた本人にはわかるが,他の生徒にとってはどうだろうか。かえって意思疎通が難しく,コミュニケーションの場において一番大事な相手意識を疎外した表現になってしまうであろう。それよりも,相手にわかりやすく伝えることを考え,”I don’t like sports.“のように,これまでの既習の知識を活かし,簡単な表現ができる力が必要である。 よって,知らない英単語や英語表現を別の表現でできるだけたくさんパラフレーズする練習が必要なのではないだろうか。多くの場合,指導者は重要構文を暗唱させるが,その一歩先の言い換え表現まで指導することが大事であると考える。 表2-3はパラフレーズの練習の一例である。 教科書の本文の内容理解を通し,自分が「読んだ」内容をもとに「話す」ことにつなげるためには,音読練習が必要になってくる。 第1章第3節第1項で,英語指導者がほぼ100% このように,パラフレーズの練習をすることで,難しい表現がやさしい表現に置き換えられ,豊か な英語表現の活用が可能となるならば,英語の学習は生徒にとってさらに楽しいものになるのではないだろうか。 ② <システム音読練習> 表2-3 パラフレーズの練習の一例 中学校 英語教育 14

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