001総教C030705H29最終稿(大栢)
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二つの領域の統合型の活動は毎時間実施しやすいレベルのものだが,④の例のように,三つ以上の領域が統合される場合は,資料集めなどから始まり,収集した資料などをもとにspeakingやwritingなどの発信活動につなげていくような比較的大掛かりな活動になり得ると考える。 ある。例えば,バレーボールのスパイク練習でいえば,スパイクが打てるようになるために必要なステップ,スイング,ミートがそれぞれ完璧にできたからといって,スパイクが打てるとは限らないのと同じことである。スパイクが打てるようになるためには,これら三つをそれぞれ別々に練習するだけではなく,三つの一連の活動からなる練習が必要である。 英語の授業においても同じような練習が必要であると考える。各領域を「有機的に関連付ける」ことが重要であり,実際のコミュニケーションに近い言語活動が教室内に作り出され,学習が促進されるように意図した領域統合が求められているのである。 また,日常生活においても,私たちは電話で聞いた内容を伝える場合,相手のメッセージを「聞き」取って,メモとして「書き」残し,それを本人に「伝える」というように,複数の領域を統合的に使っている。 このように,教科書の本文内容に応じて,授業でどのような言語活動を組み立てていくかを考えるヒントは,実は日常生活の中にたくさんある。教科書本文の「読み取り」に入る前に,本文に関連し,中学生に身近で旬な話題を「聞かせ」たり,その話題についての「やり取り」をさせると,三つの領域を使うことになる。さらに「読んだ」後に概要や感想を「書かせ」,それをペアで相互に「読み」合ってから「話す」,といったように,1つの領域で完結するものではなく,他の領域を絡めることで,英語の定着にもスキルの向上にもつながると考える。 表2-1は岡等(2004)が提案した4領域を関連付けた言語活動の分類例である。 表2-1 4領域を関連付けた言語活動の分類(35)筆者一部改変 これらの他にも組合せは可能であるが,listeningやreadingなどの受容領域は,speakingやwritingの発信領域に比べより速い速度で上達し,高い水準に到達するのが普通であることが新学習指導要領解説にも明記されている(36)。このことからも,受容領域から発信領域の流れで言語活動を進めていく方が生徒はよりスムーズに言語活動に取り組めるのではないかと考える。 この目標では,聞いたり読んだりしたことを基にやり取りを展開していく力を身に付けさせることを示しており,聞いたり読んだりして得た情報や考えなどを共通の話題とし,生徒がお互いに質問したり個人又は集団で考えや感想,理由などを交換できるようになることを重視している。(中略)話す際に必要となる表現や情報などを得るために聞いたり読んだりするという 目的を明確にするなど,他の領域の言語活動と有機的 に関連させることが大切である。(37) (下線は筆者による) 下線部にあるように,聞いたり読んだりして得た情報や考えなどの情報源は様々なものが考えられるが,同じく解説の中にある関心のある事柄から日常的な話題や社会的な話題まで取り上げたもの(38)は,生徒にとって最も身近で重要な教材である教科書ではないだろうか。 中学校 英語教育 12 表2-2は複数の領域を関連付けた言語活動例である。 表2-2 複数の領域を関連付けた言語活動例 本研究では,受容領域から発信領域の流れで言語活動を進め,一番身近な教材である教科書を活用した三つ以上の領域を統合する授業設計について実践を進める。 (2)教科書の活用 教科書は,その内容を理解することや音読することだけが目的ではなく,言語活動に必要な情報と表現を借りるための教材として位置付けることが大事だと考える。 新学習指導要領解説では,話すこと[やり取り]の目標において,次のように示されている。

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