図2-4 授業設計図 (3)研究の具体的構想 ◆領域統合の視点 図2-3はコミュニケーションを図る資質・能力の三つの要素をつなぐ言語活動を示したものである。 図2-3 コミュニケーションを図る資質・能力の三つの 図中のそれぞれの言語活動の具体的内容については後述することとするが,本研究はこの三つの要素をつなぐ言語活動を組み入れた領域統合型の授業を展開する。また,生徒による評価活動をあわせて行うことで,本研究におけるコミュニケーション能力の育成を目指すこととする。 図2-4は,図2-3で示した言語活動を組み込んだ領域統合型の授業と,それに即して生徒の学びを可視化した本研究の授業設計図である。 まず,コミュニケーション能力の質を高めるために領域統合型の授業を展開する。複数の領域を統合することは,活動を関連付けることであることから,その連続性の中で生徒は活動の意味を実感し,意欲的に活動すると考える。よって以上の視点で授業を組み立てることが大切になってくる。 また,複数の領域を関連させた活動を行うにはそれをつなぐ帯活動が必要である。帯活動を充実させ,最後のパフォーマンステストまでを視野に入れた領域統合型の授業を通して,生徒が学びを 中学校 英語教育 10 自覚できるようにすることで,複数領域を統合的に活用できるコミュニケーション能力を育成することができると考える。 ◆学びの可視化の視点 生徒が学習意欲を高め,さらに次のステップへ積極的に進もうとする姿を目指し,自己評価や相互評価の工夫を通して学びの可視化を行う。生徒が自己・相互評価に基づく学びの振返りをし,自分の伸びを確認したり,そこで得た気付きを次のステップで活用したりするためである。自己・相互評価の効果的,積極的な活用は,生徒自身が学習目標に向かって自分の取組をうまく軌道修正し,さらに伸びるためにはどうすればよいかを考えるきっかけになり,主体的に学びへ向かうスパイラルが生まれるのではないだろうか。 ◆逆向き設計の視点 本研究では,逆向きに授業を設計する。まず目標とそれを達成するための課題を設定し,課題解決に必要な言語活動を組み入れていく。 この逆向きの授業設計にあたっては,A校における取組が大いに参考になる。A校では,効果的な言語活動を行うことができるように系統性のある逆向き設計によるカリキュラムが編成されている。まず,ゴールを設定し,そのゴールの達成に向けて授業をデザインする。つまり,そのゴール達成のために年間・単元・一単位時間でどのような題材を扱い,どういった教材や活動が必要かを考え,逆算して授業を組み立てている。実際,表現力や読解力を育成する目的で,各単元に課題を設け,ペアやグループで述べ合ったりクラス規模で意見交流したりして自分の考えを深め,発信できるような工夫がされていた。 まず課題を提示し,その課題を解決するためにはどんな語彙や文構造,言語材料が必要かを逆算した上で指導計画が練られている。生徒自身も課題を達成するために必要とされる語彙や文構造,言語材料を学習することを把握しており,生徒にとって必然性のある言語活動が展開されていた。 次頁図2-5は逆向きの授業設計による単元の構想例である。この図から,逆向き設計のカリキュラム編成は,まず目標と課題を設定することから始まることがわかる。定期テストをゴールとして教科書を先に進むという授業設計においては,「ここまで進みたい,終わっておきたい」という発想で授業がデザインされていきがちだ 要素をつなぐ言語活動
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