「外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方」とは,外国語によるコミュニケーションにおいて,どのような視点で物事を捉え,どのような考え方で思考していくのかという,物事を捉える視点や考え方であり,「外国語で表現し伝え合うため,外国語やその背景にある文化を,社会や世界,他者との関わりに着目して捉え,コミュニケーションを行う目的や場面,状況に応じて,情報を整理しながら考えなどを形成し,再構築すること」(32)としている。これは,目的や場面,状況に応じて多様な人とコミュニケーションを行うために,習得した知識を活用してより深く考えたり,思考力を働かせたりしながら,適切な言語材料を活用し,思考・判断して情報を整理するとともに,自分の思いや考えを表現したり再構築したりすることが重要であることを示していると考えられる。 また,「『簡単な情報や考えなどを理解したり表現したり伝え合ったりするコミュニケーションを図る資質・能力』が外国語科の目標の中心となる部分である」(33)と明記されている。 図2-2は筆者がコミュニケーションを図る資質・能力を,「理解する」「表現する」「伝え合う」という三つの要素に整理し,それを図に表したものである。 図2-2 コミュニケーションを図る資質・能力の三つの要素 本研究におけるコミュニケーション能力とは,受け手として理解し,送り手として表現するという一方向のコミュニケーションだけではなく,伝え合うという双方向のコミュニケーションを重視した力と定義し,領域統合型の授業を通してその力の育成を目指すこととする。 図2-1 目指す生徒像と授業設計の視点 付いたことや,相手と英語で会話できることの楽しさを実感・体感して初めて,もっと話したい,もっとわかりやすく表現したい,伝え合いたいという主体的に学ぼうとする意欲がわいてくると考える。そうした実感を味わうことのできる授業をどう工夫して実践していけばいいのかがこれからの課題である。 そこで,本研究では,主体的に学びへ向かう姿勢を促す授業設計や評価について追究することを中心課題とする。具体的には,領域統合型の授業を創造し,その授業に即して生徒の学びを可視化することによって,英語によるコミュニケーションに向かう「学習意欲」をもった生徒を育成できると考える。 聞いたり読んだりして理解した情報をもとに,その情報を活用して相手に分かりやすく伝えるために,表現を工夫しながら自分の考えを伝え合うことができる領域統合型の授業を構築する。 もう一方で,生徒自身が目標を見据えた上で学習を進めることができるよう,評価の面からは,生徒の学習意欲を促す形成的評価に注目し,自己評価や相互評価を通して,自分の今の到達状況を把握するとともに,次の学びへの課題をはっきりさせることができるような工夫をし,その伸びを生徒と指導者が共有・評価することを通して,目指す生徒像の育成につながると考える。 図2-1は本研究の目指す生徒像と授業設計の視点を表したものである。 本年度は,領域統合と学びの可視化という二つの視点から研究を進める。 (2)本研究におけるコミュニケーション能力 新学習指導要領解説では,外国語科における目標が次のように設定されている。 外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ,外国語による聞くこと,読むこと,話すこと,書くことの言語活動を通して,簡単な情報や考えなどを理解したり表現したり伝え合ったりするコミュニケーションを図る資質・能力を次のとおり育成することを目指す。(31) (下線は筆者による) 中学校 外国語教育 9
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