(2030年とその先を見据えて学校教育を通じて子どもたち に育てたい姿) 1 社会的・職業的に自立した人間として,我が国や郷土が 育んできた伝統や文化に立脚した広い視野を持ち,理想を 実現しようとする高い志や意欲を持って,主体的に学びに 向かい,必要な情報を判断し,自ら知識を深めて個性や能 力を伸ばし,人生を切り拓いていくことができること。 2 対話や議論を通じて,自分の考えを根拠とともに伝える とともに,他者の考えを理解し,自分の考えを広げ深めた り,集団としての考えを発展させたり,他者への思い 3 変化の激しい社会の中でも,感性を豊かに働かせながら, よりよい人生や社会の在り方を考え,試行錯誤しながら問 題を発見・解決し,新たな価値を創造していくとともに, 新たな問題の発見・解決につなげていくことができること。 (下線,二重線は筆者による) (10) 梶田(11)は,学校で子どもたちに育まなければならない力に,「世の中に出てきちんとやっていける力」と「自分独自の人生を充実した形でやっていける力」の2つがあり,この答申において二重の書き分けがされていると述べている。前者は,主に下線部の内容であり,後者は主に二重線部の内容であると考えられる。前者は,人との関わりで必要な力であり,社会性と捉えることができる。また,後者は自分が主体となって人生をやっていく力であり,主体性と捉えることができる。答申において,「直面する様々な変化を柔軟に受け止め,感性を豊かに働かせながら,どのような未来を創化支援等に関する特別調査研究」(8)の一部である。 親の過保護や過干渉は,子どもたちが自由に様々な集団に主体的に関わる機会を奪ってしまう原因になるだろう。また,子どもの教育の仕方が分からない親の増加により,子どもに適切なしつけをする機会が減少していることも予想できる。 このように,個人主義や価値観等の変化により地域や家庭で「まわりの人々が子どもにその社会の文化を伝達しながら,子どもがその社会に適応していくのを援助する側面」は機能しにくくなってきた。 では,子どもが自ら社会化していくような環境は整っているのだろうか。子どもたちの環境の中で,この社会化の側面が機能する可能性のある集団は図1-1(p.2)のDの地域自然発生的に生まれる遊び集団・仲間集団だろう。地域の子ども集団での遊びは社会化の過程でとても重要になってくる。しかし,現在,ゲーム機等を使った遊びの個人化や,少子化による子どもの減少,遊ぶ場所の減少,習い事などで遊ぶ時間がなくなるなど様々な要因で,地域社会の中にこのような地域の集団は衰退しつつある。 このように,家庭や地域で,子どもたちが属する集団において,子どもたちが自ら社会化をしていったり,周りの大人が子どもたちの社会化を援助していったりすることは,難しくなってきていることが分かる。そこで,子どもたちが必ず属する集団である学校での集団活動の役割が今まで以上に重要になってきていると言えるだろう。学校において,子どもたちに集団活動の質と量を保障図1-3から分かるように,平成20年度,0から18歳の子どもを持つ20歳から54歳の父母3000人に調査したものである。「あなたは,世の中全般に,家庭の教育力が低下していると思いますか」の質問に対し「そう思う」あるいは「ある程度そう思う」と答えた親が約8割だった。平成18年国立教育政策研究所内 家庭教育研究会「『家庭の教育力再生に関する調査研究』結果の概要」(9)によると,「家庭の教育力低下」の理由として,「過保護,甘やかせすぎや過干渉な親の増加」を挙げた親が60%以上で1番多かった。また,「教育の仕方が分からない親の増加」も50%近くを占めた。 していくことが必須であると考える。 (3) 社会の背景と今求められる力 情報技術の進化は,地球や国境を瞬時に結び付け,グローバル化した社会へと進化させた。これからもますます,わたしたちの生活は多様に変化していくと言われている。より効率的で便利になる一方で,変化の速度が速く,先を見通すことが難しい社会になってきている。これらの社会的背景が,これからの未来を担っていく子どもたちの生き方を,大きく左右することは間違いない。では,このような変化の激しい時代に,子どもたちはどのような力を身に付けていくことが必要なのだろうか。 次の引用は,平成28年度中央教育審議会答申(以下答申)で挙げられた「2030年の社会と子どもたちの未来を見据えて,育てたい姿」である。 やりを持って多様な人々と協働したりしていくことができること。 小学校 特別活動 3 図1-3 家庭の教育力に関す る意識
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