【子どもが未来を創り上げていくために必要な資質】 1 自分の目標を自分で見いだし,物事に進んで取り組み, 2 よりよい人間関係を形成し,他者との協調や配慮, 主体性 ・自ら課題を見つけて,解決に向けて進んで取り組む諸特性 社会性 ・良好な人間関係を築く諸特性 ・組織の一員としての諸特性 私たちが幸せに生きていく上で「主体性」と「社会性」が必要であり,どちらも集団生活を通して育まれていくものであると言える。言い換えれば,それぞれの発達段階でどのような集団に属し,どのような集団活動をどれだけしてきたかが,「主体性」や「社会性」の発達に大きく影響を及ぼすといえる。第2項では,現在の子どもたちがどのような集団に属し,どのような活動をしているのか,また子どもたちの実態はどのようなものかについて述べていく。 たり,自分の行動に責任をもったりなどという訓練や体験」をすることが主体性を伸ばすものだと主張し,そのような訓練や体験は「適切に行われる集団活動の中に豊富にその場と機会がある」と述べた。 京都市の平成29年度学校教育の重点(4)においても,「主体性」や「社会性」が,子どもが未来を創り上げていくために重要な資質であると述べられており,それらが次のように書かれている。 「社会性」を,下線部と波線部の2つに分けて考えてみると,前者は人とうまくやっていくこと,後者は組織の中でうまくやっていくということだと考えられる。 以上より,筆者は,社会性と主体性を以下のようにとらえる。 (2)子どもをとりまく集団 校であり,Bが地域の子ども会,少年スポーツ関達成しようとする「主体性」 集団に対する責任を自覚し態度化する「社会性」 子どもたちはどのような集団に所属しているのだろうか。図1-1は杉田(5)が子どもの所属する集団をA・B・C・Dに分けたものである。 杉田は,Aは家族や学係団体やボーイスカウト等々の団体であり,Cは,コミュニティーにおける隣人関係であり,Dが地域自然発生的に生まれる遊び集団・仲間集団であると述べている。また,この中で真の子どもの世界はDのみであると述べている。 次に,これらの子どもたちが所属するA・B・C・Dの集団で行われる集団活動の実態について考えていく。まず,少子化により,Aでは家族内の子どもの数が減少し,Dでは子どもの遊び集団が減少するなど,子ども同士が関わり合う機会が減少してきていると言える。また,Bの集団は参加者がごく限られていたり,Cの隣人関係は,以前より親密でなくなり関わり合いが減少していたりする傾向にある。これらから考えてみると,子どもたちを取り巻く集団自体が減少し,子どもたちが触れ合う集団の量が減少してきたと言える。 では,この少なくなってしまった集団活動の質はどうだろうか。つまり,子どもたちが社会性や主体性を育むことができるような質の高い集団活動になっているだろうか。 子どもたちが身近に所属している家庭や地域集団で,子どもたちが社会化していくのを援助するという機能は低下してきていると考えられる。それは,以下の調査により考えられるものである。 図1-2は,文部科学省による「地域の教育力に関する実態調査」(6)の結果である。 粕谷は,「地域の人間関係の変化は,昔あったような,地域の大人たちが自分の地域の子どもたちの家と名前を知っていて,声をかけたり,悪いことをしようとしたときは他の家の子どもでも叱ったりするような関係性を失わせてきた」(7)と指摘している。つまり,個人主義が浸透した現在,他の家のことに口を出さない風潮が広がり,子どもたちを地域で育てていくということがなくなってきたと考えられる。家庭ではどうだろうか。次頁図1-3は,文部科学省委託調査「家庭教育の活性図1-2から分かるように,調査対象の保護者の半数以上の55.6%が自分の子ども時代と比べて地域の教育力が低下していると答えた。その理由としては,「個人主義が浸透してきている(他人の関与を歓迎しない)」が最も多く,半数以上を占めている。 図1-1 子どもたちが 所属する集団 図1-2 文部科学省 地域 の教育力に関する 実態調査 小学校 特別活動 2
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