本研究では,子どもたち自身が学級目標を意識し,その達成を目指していける取組を行ってきた。しかし,そもそも学級目標はどのようにしてつくるべきなのだろうか。 学校には,学校教育目標,学年目標,学級目標がある。これらをすべて考えて,学級目標はつくられているだろうか。また,学級目標をつくる上で考えておかなければならないことは他にもある。当該学年の発達段階やクラス替えの有無,担任教員が変わるかどうかなどである。研究実践校においても,各クラス,各学年によっても学級目標のしかし,前述の第1章第2節で述べた特別活動の課題(p.5)にもあったように「どのような学習過程を経ることにより資質・能力の向上につながるのか」を意識できずに進めてしまうと効果が上がらないだろう。この研究を通し,教員が目指 すべき学級像や子どもの姿を明確にし,子どもた ●係活動で子どもの自治的な能力をつけるために ちをしっかり見つめ,実態に応じた関わりをしていくことが大切だと感じた。子どもたちの成長に B校の担任教員は児童会の担当であり,学校を動かす児童会にも力を入れたいと考えていた。そ応じ,さらなるステップアップのために,時には子うなると,高学年は休み時間などを児童会や委員どもたちに「任せきる」ということも有効であった。 会活動の時間にあてる子ども多くいるだろう。係活動との両立の難しさを感じた。係活動を子どもたちの自治的な活動にしていくことを,低学年・中学年のうちにできていれば児童会や委員会活動がスムーズで豊かなものになると考えられる。低・中学年という発達段階に応じた自治的な活動の在り方についても考えていく必要があると考える。 A校の担任教員が3回目の活動の終わりに,「子どもたちの力でやらせてみたことにより,子どもたち自身の力でこんなにも進められるものだということに気付いた」と話されていた。そして「それが担任としてうれしいことであるし,やってよかった」とも話されていた。また,B校の教員は,「子どもに『任せる』ということは忍耐のいることだ。教員が進めていく方が明らかに時間の短縮になる。けれど,『待つ』ことが子どもを『育む』ことにつながっているという意識を持つことが大切だと思う」と話されていた。また,「経験の少ない教員のために,研修会をもって学校で共通理解をしたり,子どもたちから発信したりすることが大切であり,それが児童会活動等につながっていく」とも話されていた。 時間の有効利用の仕方についても課題になるが,それは今まで行っていた活動をより自治的な活動にしていくという視点を入れて取り組むことである程度解決できるのではないだろうか。A校の教員も,「次年度以降取り組むときはもっと時間を短縮しながらも充実した取組をすることができそうだ」と話されていた。 第2節 新たな課題 ●学級目標に向かわせるために 小学校 特別活動 30 つくり方は様々だった。学校全体が同じ方向を向いて教育活動を進めていくためにも,学級集団の質を向上させるためにも,学級目標そもそもの意義や学級目標のあり方等,今一度見つめ直すことも必要ではないかと考える。 おわりに 「様々な集団の中で良好な人間関係を築き,自 分の居場所を見つけることが幸せな生活を送るために大切」であると第1章で述べた。子どもたちの幸せな生活のために,我々教員ができることは,子どもたちがよりよい人間関係のつくり方を学ぶことのできるような集団活動の機会を保障することだろう。今回の研究においても,話合い活動,集会活動,係活動などにおいて充実した子どもたちの姿をたくさん見ることができた。これらは,教員が意図をもって取り組んだ成果だと考えられる。 A校の教員は,この実践の後新たな目標を決めて,すでに動き出していた。B校の教員もまた,学校全体を動かすために動き出していた。この2人の教員のように目指すべき目標を持ち,子どもたちに向き合いながら教育活動を続けていくことこそが,子どもたちの可能性を伸ばしていくと実感した。「最近の子は人間関係を作るのが苦手だ。」ではなく,苦手なら育んでいけばよいという考えをもつことが大切だと確信した。 最後に,本研究の趣旨を理解し,協力して下さった京都市立醍醐西小学校と京都市立室町小学校の校長先生をはじめ,自らの学級での姿を調査対象として協力して下さった研究協力員の先生方,いつも温かく迎えて下さった両小学校の教職員の皆様に心から感謝の意を表したい。
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