図4-8は学級に関することをグラフで表したものである。全体的に見てそれほど大きな変化は見られなかったものの,自己有用感が高まった子どもが多かった。これらから,話合い活動を中心とした活動を繰り返す中で,自分たちで思いを伝え合う大切さに気付き,お互いの思いを認め合うことができた結果,自己肯定感や自己有用感につながったと考えられる。 前述のように1回目から3回目の話合い活動において,子どもたちの大きなステップアップが見られた。話合いの中での個々の意見や実践において,自分だけがよい方法ではなく,みんなが楽しむ方法ということに子どもたちの意識が向いていた。 では,なぜ子どもたちにこのような変化が見られたのか。主な要因としては,次の三つが考えられる。一つ目に,学級目標をみんなで共有したことにより目指すべき方向が明らかになったこと。二つ目に,子どもたちの自由度を上げることによって,自分たちの力でよりよい学級をつくる意識が芽生え, それが原動力になったこと。三つ目にこれらの集団活動の経験そのものが他者意識を育てたこと。つまり,活動していく中で意見のぶつかり合いを経験し,みんなにとってよい方法を考えるようになったと考える。また,担任教員は,授業に関しても自分の思いを伝える子どもが増えたと言っていた。それが,話合い活動につながり,話合い活動の経験が授業にもつながっていると言えるだろう。 図4-9は,3回目の活動後の振返りの一部である。 図4-9の上の意見のように,学級目標を意識し図4-7 自分自身に関すること 図 4-9 3回目の活動終了後の振返り 図4-8 学級に関すること ている意見が多数あった。また,下の意見のように課題を見つけて次につなげようという意見もあった。 このように話合い活動において,子どもたちによるSTPDサイクルを繰り返すことで,進んで課題を見つけようという気持ちや,相手を思いやる気持ちが少なからず育まれたといえるのではないだろうか。係活動ではどうだろうか。 図4-10は係に関することをグラフで表したもであ である。また,5年生残りの時間で学級での経験を学級外で生かしていくことができるよう土台作りをしていかなければならないということである。さらに,委員会等で子どもたちによる自治的な力が発揮できれば,それを見て経験の浅い教員が子どもたちの姿から学ぶことも多いと語られた。 (3)研究仮説に関して 本研究では「集団自治を意識した意図的・系統的な活動を取り入れることで,進んで関わり合い高め合うことのできる集団へと育てることができる。」という仮説のもと,活動に取り組んできたが,この仮説はある程度実証されたと言える。話合い活動を中心とした活動や係活動を継続し行うにつれて,お互いの考えを出し合い,それぞれのよさを生かしながら活動していく姿が見られるようになったからである。これらの特別活動を中心とした子どもによる自治的な活動を意図的・系統的に取り入れていくことで,特別活動だけではなく子どもたちの活動すべてと大きく関わってくる。これらの自治的な活動の経験が自信となり,自ら様々な集団に関わっていく土台となるだろう。 図 4-10 係活動に関すること 小学校 特別活動 29 のである。 A校同様すべての項目で上がった。特に「自分のよさをいかして」や「みんなの協力」「係のめあてにそった活動」に関して顕著だった。これは,係活動において係のみんなが共通のめあてを持ち,自治的な活動を繰り返した結果,係としてのまとまりができたのではないだろうか。 担任教員に今後の課題を聞いたところ,来年度 は6年生になるので,学年全体を,学校全体を動 かせる力を身に付けさせていくことだということ
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