言える。 それぞれの役割を体験する前には,子どもたちが「リーダーにとって大切なこと」や「フォロアーにとって大切なこと」を考えられるように,「2匹のライオン」という教材を使った道徳科の学習を用いた。この学習のねらいは,「アーサーとジャックのどちらを王様に選ぶかを考えることを通して,強さや優秀さと思いやりや優しさのどちらも大切であり,どちらか一方が優位ではなく互いに補完しあうことが大切であることに気付かせる」ということである。これは,荒木紀幸の「モラルジレンマ資料と授業展開」の「2匹のライオン」を利用し行った。内容は,自分本位だけれども仲間を引っ張る力のあるジャックと,引っ張る力はないが,弱いものへの思いやりや優しさのあるアーサーのどちらを王様に選ぶのが森のみんなにとってよいか考えるといったものである。最初に「リーダー」と聞いて思い浮かぶものを出させた。 また,係活動が活発に行われるようになると,活動に対する自分の思いが具体的になってき,係の仲間同士の意見の衝突があった。リーダーとして計画通りに進めたい子どもと,計画は分かっているが変更した方が効率的だと考えた子どもの意見のぶつかり合いだった。他の係のメンバーも入ってお互いの思いを聞き合うと,理解し合うことができて,結局効率的な方がよいという話になり,計画を変更して進めたというものである。この出来事は,どちらも自分の係活動に対する思いをしっかりもち,よりよい係活動になるように考えた結果起こったことだ。結果的にお互いにとってもみんなにとってもよい方法を考えることができた。 また,ある係が朝の会を使って係の活動の予告をしている時に,聞いている子どもの一人が「楽しみだ」と言った。その子の反応をうれしく思い,係の子が「ありがとう」と伝えるという出来事があった。それぞれの係のよさを認めていこうという姿の表れと,他の人に喜んでもらえるといううれしさに気付く出来事だった。 (2)役割体験をして相互理解を目指す 第2節の4項で述べた,「役割体験をして相互理解を目指す」といった取組を行った。係活動の計画から振返りまでの間でリーダーを交代するといったものである。 ●道徳 「リーダーにとって大切なことを考えよう」 図3-28はA校で出た意見である。 だ後に,子どもたちのほとんどが選んだのが,引っ張る力はないけれども思いやりのあるアーサーのほうだった。話合いの中で,思いやりや優しさもリーダーには大切だということに気付く一方で,引っ張っていく力も大切だということにも気付いていた。そこで,「2匹ともがリーダーになればよい」や,「リーダーに足りない部分はリーダー以外のみんなで補えばいい」といった意見が出てくるようになってきた。最後には,みんなが幸せに暮らすために,リーダーだけががんばるのではなく,みんなで助け合って生きていくということが大切だと気付いた。この学習から,リーダーにとって大切なこと,フォロアーにとって大切なことを考えた。また,自分たちの生活を振返り,宿泊行事等でリーダーになったときの難しかったことやみんなで協力することの大変さなどにつなげて考えていった。 ●役割体験 図3-29は役割体験の方法やリーダーの役割について説明する際に使った資料である。 図 3-29 役割体験説明用資料 次頁図3-30は,A校で実践した様子である。 子どもたちがリーダーにもつイメージはみんなの中心となりまとめていったり,引っ張っていったりするというものだった。また。「強い」や「社長」といった言葉も出てきた。 しかし,教材を読ん 図 3-27 係ノートにおける振返り欄の 集計 図 3-28 A校の意見 小学校 特別活動 25
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