001総教C030705H29最終稿(中澤)
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杉田は,「A.Bの段階を飛び越して,いきなりCの段階のような活動をさせ,しかも事後の指導はほとんどせず『うちのクラスではたいした活動はできない』とあきらめたり,『お前らダメだな』と子どもたちに責任を負わせたり,などというような例と,その逆にいつまでもBの段階の,指導・援助を加えながらの『実習』を繰り返している例の両者が,現場には意外と多い」と指摘している。これでは,いつまでたっても子どもたちをステップアップさせることができない。よって,子どもの実態や発達段階に応じ,どこから始めることが適切であるか見取り,ある程度指導したら,勇気を出して子どもたちに任せきるということも必要になってくるだろう。 さらに,図2-5は赤坂の学級をチーム化するステップ(28)に杉田のA~Eの「自治的活動を育てる段階」の視点を入れて筆者が3つの段階にまとめなおしたものである。 図 2-5 自治的な活動を育てるステップ E 初めから子ども達にほとんどを任せ,子ども達も喜んで元気よく活動する。教師は終わった後で,ごく簡単な講評をしたり,なお一層がんばるように激励したりするだけでよいようになる段階 第1段階は,教員の関わりが多く,子どもたちの自由度が低い段階である。今までに学級活動や自治的な活動の経験があまりない子どもたちに必要な段階である。子ども同士のつながりより,教員と子どもの関係性が強いことが予想される。第2段階は,教員の関わりを少なくしていき,徐々に子どもたちの自治的な活動の幅を広げる段階である。子どもたち同士の試行錯誤が繰り返され,関係性が密になっていくことが予想される。教員は指導するというよりむしろ支援していくという段階である。第3段階は,自治的な集団の段階である。この段階は,ほとんど教員が関わらなくても,自分たちでよりよい学級集団を目指し活動することができる段階である。教員は,支援から見守りに変わる段階である。 このように,教員の関わりを指導→支援→見守りと徐々に減らしていき,自治的集団に育ててい小学校 特別活動 10 くということが大切なのである。赤坂は,第3段階では,価値が内在化し,教員に言われるからそうしているのではなく,子ども自身がその状態を心地よいと感じ,自らの判断でそう行動するようになると述べている。これこそが,子どもが「主体」の活動になったと言えるだろう。 このように,子ども「主体」の自治的な活動にするためには,教員が「育てる」ことを意識し,子どもたちに意図的に「任せる」ということである。活動を仕組む際には,1つの大きな課題にチャレンジさせていくことも大切だが,1年のうちに何度か同じような課題に取り組み,課題ごとに役割分担などを変えて活動を行うことで,集団がステップアップできるだろう。学級集団での活動においては,例えば,集会活動での「お楽しみ会」を,期間がたってからもう一度取り組むというようなものである。そうすることにより,前回見つかった課題を生かすことができ,子どもたちにとっても自分たちの活動の進歩がよく分かり,活動意欲につながると考える。 また,係活動においては,振返りから新たな課題を見つけ,改善し,実践するという短期間のSTPDサイクルを繰り返すことにより,子どもたち自身がステップアップできていることを実感できると考える。 第3節 お互いを理解し,よさを生かす活動 (1)役割体験をして相互理解を目指す 集団で活動をする際に,リーダーシップを発揮できる存在は必要である。しかし,最近「リーダーシップを発揮できる子どもが減った」とよく耳にする。そもそも,リーダーシップとは何だろうか。カリスマ性のあるリーダーが集団を牽引する姿や,学級委員や班長などが積極的に集団をまとめる姿をイメージするだろうか。石川によると,リーダーシップとは「職場やチームの目標を達成するために他のメンバーに及ぼす影響力」(29)を指すと述べている。また,片岡は,「集団のメンバーがすすんで集団の目的の達成に努めるような,しかもメンバー相互の連帯性を保ち固めるような,働き」(30)と述べている。これらから,リーダーはみんなが目標達成に向けて協力していくことができるように自分なりに考えて動いていく存在なのではないだろうか。人によってその方法は変わってもよいだろう。 リーダーシップを育むと同時に大切なのは,フ

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