(国際平均 2011年n≒240000/2015年n≒250000) (日本 2011年n≒4400/2015年n≒4400,*4700) 日本の成績は2011年よりいずれの項目でも向上している。特に得点に関しては国際平均を大きく上回り,2015年は2011年よりも得点に有意な上昇がみられる点からも,高い学力を維持していることがわかる。 て,社会への関わり方を選択・判断したり,自らの立ち位置について合理的に意志決定したりするなど,社会を構想する力が求められている。価値観形成を目指す社会科などでも,このような力の育成を目指して学習が展開されている。 そのような学習に対し,次のような指摘もある。米田は,価値判断・意志決定型の授業において,一時間の単発の授業が多いこと,価値判断・意志決定のための材料を本時までに提供しない授業をよく見受けること,子どもが自分の考えさえ述べればよしとされることなどを問題として挙げている(26)。社会との関わり方を選択・判断したり,未来の社会を志向したりするためにはそのための素地となる社会認識を豊かに習得する必要がある。価値判断をしたり意志決定をしたりする学習場面を設定することは重要だが,概念を獲得するまでの学習,基礎的な探究における学習の充実を図ることを目指さなければならない。その上で習得した概念を活用し,社会に見られる課題について考えたり,社会への関わり方を選択・判断する学習場面を設定したりすることが重要なのである。そうすることで,将来社会に出たときに生きて働く力を身に付けることができるようになる。そのためには単元構想をする際に,習得した概念をどのように活用するのか,発展的な探究における活用Aの場面を明確に意図した単元構想が必要となる。 (2)算数科に見られる現状 算数の現状から課題を考察すべく,2011年,2015年に実施された国際数学・理科教育調査(以下:TIMSS)の調査を比較した。表2-1はその結果である(27)。 表2-1 TIMSS調査における日本と国際平均の比較 その一方で,国際平均と比較したときに,算数・小学校 学習指導法 7 数学が楽しいと感じている子ども,数学を勉強すると日常生活に役立つと感じている子どもの割合は増えているものの,その割合が10ポイントも低いという現状がある。高い得点を取ることができる一方,算数・数学の楽しさや有用性を実感できていない点が課題であるといえよう。これは2011年以前のTIMSSの調査でも同じ傾向がみられる。現行の算数科学習指導要領には,「進んで生活や学習に活用しようとする態度を育てる」(28)と,態度目標が示されている。子どもたちが算数で学んだことが実際の生活や学習などの様々な場面で活用されていることに気付くことで,算数のよさが実感を伴って味わうことができることを目指した視点は,平成20年の答申でも示された課題に対応した内容である。 次に新学習指導要領を見てみる。 数学的な見方・考え方を働かせ,数学的活動を通して,数学 的に考える資質・能力を次のとおり育成することを目指す。 (1)数量や図形などについての基礎的・基本的な概念や性質などを理解するとともに,日常の事象を数理的に処 理する技能を身に付けるようにする。 (2)日常の事象を数理的に捉え見通しをもち筋道を立てて 考察する力,基礎的・基本的な数量や図形の性質など を見いだし統合的・発展的に考察する力,数学的な表現を用いて事象を簡潔・明瞭・的確に表したり目的に 応じて柔軟に表したりする力を養う。 (3)数学的活動の楽しさや数学のよさに気付き,学習を振 り返ってよりよく問題解決しようとする態度,算数で 学んだことを生活や学習に活用しようとする態度を養う。(29) (下線は筆者による) 上記の目標に見られるように,育成を目指す数 学的に考える資質・能力の三項目の中全てに,下 線のような日常生活とのつながりを重視した視点が示されている。先に示したTIMSSの結果や現行の学習指導要領の目標も併せて考えてみると,算数で学んだことがいかに自分の実生活に役立つのか,学んだことの有用性を実感すること,この充実が求められている。これが算数科における一つ目の課題である。これは算数・数学の本質を追究していく上で欠かすことのできない視点である。算数科は数理的な世界の現象の解明に追究活動の視点をもつことが多い。しかし,その数理的な現象の学習は子どもにとって非日常的なものであり,とらえづらい側面をもっている。日常生活の場面を数理化して子どもがとらえられるようにし,その上で数学的な見方・考え方を働かせ,学習に臨むようにしなければならない。平成28年の答申や新学習指導要領解説算数編には次頁図2-2のような算数における学習プロセスが示されている(30)。 *
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