とができるのである。 最後に探究についてである。探究の中心とされた総合的な学習の時間は,「自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力を育てること」「学び方やものの考え方を身に付け,問題の解決や探究活動に主体的,創造的に取り組む態度を育て,自己の生き方を考えることができるようにすること」(9)をねらいとしてその時間が創設された。そのねらいに加え,現行の学習指導要領では探究的な学習となることを目指し,目標や内容の取扱いにも探究的な学習の充実を図ることが明示された。その探究的な学習が新学習指導要領では各教科等を通じて求められていることから,探究では,自ら課題を見付けるとともに,その課題に対して主体的に向き合い,よりよく解決することを目指す問題解決力を身に付けること,その問題解決力を高めることを目指しているととらえることができる。 (2)各教科等と探究的な学習で育む資質・能力 平成28年の答申ではそれぞれの教科等の特質に合わせた学習の過程が例示されている。例えば,理科では自然事象に対する気付きから課題の設定を行い,仮説・検証計画を設定し,観察・実験を行い,その結果から考察したことを基に新たな課題を発見したり,学んだことを次の課題や日常生活に活用したりする,といった過程が示されている(10)。家庭科では,生活の中から課題を発見し,解決方法を検討し,その方法を実践するとともに,実践した活動を振り返り,評価・改善し,その結果をみつめ,解決すべき課題をさらに考える,といった過程が示されている(11)。各教科における物事の本質を探って見極める探究的な学習の展開を目指しているのがわかる。それぞれの教科の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら学習を展開することで,それぞれの教科で育成を目指す資質・能力を身に付けることができるようになる。さらに探究的な学習を展開することで,それぞれの教科で育成を目指す資質・能力のみならず,教科等を越えた,問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力や,子どもたちが現代的な諸課題に対応できるようになるために必要な資質・能力の育成にもつながっていくと考えられる。 この示されたプロセスを基盤とし,子どもが主体的に学習を展開する必要がある。子ども自身が主体的に学びに向かい,各教科における物事の本質を追究することで初めて,習得した知識・技能小学校 学習指導法 3 を活用して思考・判断したり,新たな知識を習得したりし,学びを深めていくことができるからである。そうすることで各教科における探究的な学習は充実し,今求められる教科等の枠組みの中で育まれる資質・能力のみならず,教科等の枠組みを超えた資質・能力の育成を図ることができよう。 (3)習得・活用・探究と主体的・対話的で深い授業改善の取組を活性化していく視点として,主体的・対話的で深い学びが位置付けられている(12)。習得・活用・探究と,答申で示された主体的・対話的で深い学びはどのように相互が関連しているのだろうか。その関連を考えてみる。 まず,主体的・対話的で深い学びとはどのようなことを示すのか整理する。この主体的・対話的で深い学びとは,特定の指導方法を行うことでも学習手段を指すものでもなく,子どもたちに求められる資質・能力を育むために必要な学びの在り方を考え,授業の工夫・改善を重ねていくための視点である。その視点を平成28年の答申では次のようにまとめている。 基礎的な探究・発展的な探究の学習はいずれも子どもたちが自ら課題を追究し考えようとする主体的なものである必要がある。「主体的な学び」とは,基礎的な探究と発展的な探究を貫くものとして位置付けることができる。また,子どもたちが調べたり考えたりした結果習得した知識・技能を,友だちや教師,資料などと対話をする場面が学習の中では取り入れられる。この対話を通じて考えが深まったり広がったりしていく。つまり,習得した知識・技能が「対話的な学び」を通じて活用されていくと考えられる。このような学習を通じて深い知識を獲得したり,その事象の意味を深く考えたり,単元を通じて習得した概念や法則を用いてより現実的な課題について考えたり,その解・学ぶことに興味や関心を持ち,自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら,見通しをもって粘り強く取り組み,自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」が実現できているかという視点。 ・子供同士の協働,教職員や地域の人との対話,先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ,自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているかという視点。 ・習得・活用・探究という学びの過程の中で,各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら,知識を相互に関連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,問題を見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造したりすることに向かう「深い学び」が実現できているかという視点。 (13) 学びの関係
元のページ ../index.html#5