001総教C030705H29最終稿(加藤)
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「物事の本質をさぐって見極めようとする一連の知的営み」が探究である。そのような学習を構築することを目指して本研究を進め,探究的な学習の本質に近づくことができたのではないかと考える。その一方で,これでよいという授業,完璧な授業は筆者はないのではないかとも考える。今100点と思える授業ができても,改めてその授業を振り返ってみると,改善の余地は見つけられるはずである。そこでたゆまぬ改善を進めることも本当の探究であろう。よりよい授業を追究し続けることが,今もこれからも変わらず,子どもたちに求められる力をつけることにつながるであろう。 <発展的な探究について> ・ ・分数をするのはいいけど,通分するのに時間がかかる。 ・いろいろ考えるけど,計算が間違ってるから苦手。 ・今までやった面積の学習の問題が全部一緒になっているみたいで,難しかったです。 ・資料を読み取って考えることがそんなにできなかった。 ・興味のある問題だったりない問題だったりしたから。 ・それぞれの立場の説明がわかりにくかったから。 ・箱に詰めるということは日常的でわかりやすいが,日常生活で長さが分数で表示されることはほとんどないので,使えるとなると難しい。 ・自分の実力に合わせて解いてみたい,と思える問題を選択するというのもありかもしれません。 ・活用することはたのしいと感じた子どもも多かったようですが,複雑な計算をする点で意欲・たのしさが低下してしまう子どもも何人かいたようです。 ・新しい事実が最後に登場したことにより,子どもの思考の連続性が途切れたようにも感じた。 小学校 学習指導法 30 結果からは子どもたちは実生活に生かすことができると感じている回答も見られる。一方,活用問題がさらに実生活に生かすことを実感できるようなものを考える必要があるといえよう。 また,子どもの実態を適切にとらえた上で活用問題を考えるとともに,支援を要する子どもたちへの手立てを考えていくことも活用場面では重要である。まず,そこに至るまでの基礎的な探究の学習を充実させ,子どもたちの知識・技能の確実な習得を図る。その上で活用問題を解くために必要な個に応じた支援を行うようにしていく。自分の力で解くことを目指すが,ただ難しい問題を解いて終わった,やっぱり難しかった,というイメージを抱いて学習を終えるのではなく,新たな問題にも取り組みたいという学びの意欲を育むことができるよう,支援の在り方もさらに考えたい。 さらに,発展的な探究における活用Aの在り方についても考えていきたい。習得Aの活用の仕方は様々なものがある。本実践では,社会科において未来について考えたり,選択したりするという場面を,算数科では活用問題を提示したり,日常の中にある事象を問題化したりし,活用場面として設定した。しかし,教科,単元,子どもの実態等に応じ,様々な活用場面を設定する必要がある。豊かな活用場面を設定し,適切にその活用を図ることができるようにすることで,充実した探究的な学習が実現できると考える。 最後に,よりよい授業を考えていく上で,お忙しい中様々な実践に快く協力いただいき,ご一緒に探究してくださった下京雅小学校,砂川小学校の研究協力員の先生方に心より感謝申し上げる。 究における習得aと活用aのサイクルが充実し,充実した習得Aを図ることができ,子どもたちへの適切な支援にもつなげることができたと考えられる。発展的な探究の場面の位置付けは,教師にとっても子どもたちへの指導を明確にする効果も期待することができることが示された。 第3節 さらなる探究的な学習の充実を目指して 探究的な学習の成果が見られた一方,子どもたちの記述には次のようなものも見られた。 これらの記述には,基礎的な探究における習得Aが十分ではなかったことが示されている。その結果,発展的な探究の場面で子どもたちが習得Aを生かすことができず,発展的な探究の学習に対して難しさを感じたり,十分な活用ができなかったりしたことにつながっていることがわかった。基礎的な探究の充実の重要性が示されている。 また,研究協力員の先生方からも次のような回答もいただいた。 社会科においては,発展的な探究の場面においても思考の流れを連続させる必要がある。思考が連続しなければ子どもの主体的な学びは展開できないからである。第4学年の実践では過去と現在,未来という時間軸の中で,基礎的な探究は過去を中心に学習を進めてきている。そこからさらに未来という視点をもつことは,発達段階を考えると思考の連続性をより考慮すべきであったと考える。どのような場面で活用場面における事実と子どもたちを出合わせるかなどを考えていく必要がある。 算数科においては,学んだことが実生活に生かすことができることを目指してきた。アンケートおわりに

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